今から60年近く前、映画「007は二度死ぬ」の撮影が行われた鹿児島県南さつま市の古民家が、台風や老朽化のため倒壊の恐れが高くなり、住民が補修資金を集めようとクラウドファンディングに取り組みました。

“007の聖地”を守りたい。そこには2024年4月に病気で亡くなった男性との誓いがありました。

リアス式海岸の入り江が広がる、南さつま市坊津町の秋目集落。この小さな漁村が1967年、昭和42年に公開された人気映画の舞台の一つとなりました。

ジェームズ・ボンドが活躍する映画シリーズの5作目「007は二度死ぬ」です。

9月、取材したこの日、ファンという男性が東京から憧れの地を家族と訪れていました。

東京から訪れたファン
「やはり男のロマン、景色もすごくいい。(この映画は)日本が舞台だったので、自分で回れて気持ちがいい」

秋目集落で民宿を営む上塘照哉さん。007を地域の活性化に生かそうと設立された、一般社団法人「007 AKIME」の代表を務めています。

「007 AKIME」代表理事・上塘照哉さん
「(ボンド役の)ショーン・コネリーもうちに行ったり来たりしていた。世界の人たちを呼び込める素材があるのは、50人もいない集落では素晴らしいこと」

大城哲也記者
「秋目の集落を見渡せる小高い場所にある小さな家でも、今もなお語り継がれる重要なシーンが撮影されました」

「キッシー&ボンドの家」という愛称で呼ばれている古民家。敵のアジトに乗り込むジェームズ・ボンドとキッシーの役名でボンドガールを演じた浜美枝さんが潜伏する設定で撮影が行われました。

しかし・・・。

上塘さん
「見てください。シロアリ(の被害)がすごい」

Q.(家は)どんな状態ですが?
上塘さん
「どんな状態って…最悪です」

昭和初期に建てられた建物は、老朽化が進んでいます。

また、2024年8月の台風10号の被害で倒壊の恐れも出てきました。

007AKIMEの上塘さんらメンバーは、行動を起こします。

古民家の再生のため、屋根を補修したり、柱や梁に強度を持たせる修復費として、350万円の支援金をネットで募るクラウドファンディングをスタートさせました。

「ロケ当時の面影を残すことに意味がある」こうした思いにはもう一つの訳がありました。

秋目集落のリーダー的存在だった宮内一朗さん。2024年4月に病気のため68歳で亡くなりました。

宮内一朗さんの弟 明彦さん
「闘病生活で体をうまく動かすことができず、007やクラウドファンディングのことを一生懸命やれなかったことに悔いが残ったのではないか」

小学校5年生の時、エキストラとして出演した宮内さん。2023年に海外のファンが秋目集落を訪れた時、ファンに撮影当時の面影が残る風景をPRします。

生前の宮内一朗さん
「007の“国際子役スター”です。ここから見える景色は、映画と一緒。道路がアスファルトになっているだけ」

ロケ地に選ばれたことを誇りにしていました。

しかし、病気と闘いながらクラウドファンディングの準備を進めていた矢先に帰らぬ人となりました。

故・宮内一朗さんの弟 明彦さん
「兄がやれなかったことを継いで、上塘さん、(メンバーの一員でともに活動している)桑原田くんがやってくれているのを天国でうれしく見ていると思う。頑張って達成してもらいたい」

9月14日、その上塘さんら007 AKIMEのメンバーは鹿児島市で行われた映画の魅力を紹介するイベントで、参加者にクラウドファンディングへの協力を呼びかけました。

クラウドファンディングは9月30日、終了3分前の午後11時57分に目標の350万円を達成しました。

200人を超える支援者のおかげで、夢が現実となりました。

将来は古民家を007の資料館として後世に残し、“AKIME”の名を世界へ発信したいと思っています。

上塘さん
「『もう無理かな』という気持ちだったが最後の最後に、ファンの協力で達成できた。(亡くなった)宮内一朗に負けないように、どんどん(地域の魅力を)掘り起こしてみんなを元気づけたい。頑張ります」

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