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 千葉県大多喜町でコメ農家と“二刀流”生活を送っているプロバスケットボール選手たちがいる。その背景には何があるのか、取材した。

■農業だけではなく…キャリア形成にも取り組む

「esDGz OTAKI.EXE」 この記事の写真

 素早い攻防が繰り広げられる、3人制バスケットボール。2014年には国際バスケットボール連盟がプロリーグを設立。21年の東京オリンピックから正式種目に採用されている競技だ。

 14日、プロリーグの試合で勝利した「esDGz OTAKI.EXE」。彼らには、バスケットボール選手とは違う“別の顔”があった。

チームの本拠地は廃校になった小学校

 かつて城下町として栄え、現在は田畑など豊かな自然が広がる千葉県大多喜町。3年前チームが本拠地を置いたのは、この町の廃校になった小学校だ。

もう一つの顔

 なぜこの場所なのか?実は、3人の選手には「コメ農家」というもう一つの顔があった。

遠藤勇一選手(25) 遠藤勇一選手(25)
「コシヒカリです。(バスケットは漢字で)『籠』に『球』で『籠球』なので、籠をとって『籠米(かごめ)』です」 年間およそ45トンのコメを生産

 東京ドーム2個分にあたる水田で、年間およそ45トンのコメを生産しているという。

遠藤選手
「(Q.練習と農業、どちらが大変?)農業は暑いし、地味だし、同じ作業をずっとやらないといけないというのは、農業のほうが精神的にきついです」

 コメ作りはまだ2年目、失敗も多いという。

遠藤選手
「稲刈る前に水を抜くんですけど、それがちょっと遅すぎた。地面がゆるくなっちゃって。まだ2年目なんで、改善しながらという感じで」 田植、収穫、精米、在庫管理や出荷など、すべてを自分たちで行う

 大多喜町でも進む高齢化。耕作をしていないと農地は荒れてしまうが、荒れるくらいならと、所有者が彼らに貸してくれているのだという。

 田植えから収穫、精米、在庫管理や出荷まで、すべてを自分たちで行っている。

社会人として必要なスキルを身につけるキャリア形成にも取り組んでいる

 一方で、チームは現役の時から引退後に備え、農業だけではなく、パソコン作業や電話の受け応えなど、社会人として必要なスキルを身につけるキャリア形成にも取り組んでいる。

大橋胤選手(22)
「選手はけがしちゃったりして仕事なくなっちゃいますし、ここだと、けがや引退しても他の仕事があるというのは安心だなと思います」

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■選手たちの「楽しみ」と「目標」は?

■選手たちの「楽しみ」と「目標」は?

午前中は農作業、午後は事務作業

 バスケットボール選手とコメ農家という2足のわらじで活動する彼らの一日は、とてもハードだ。

遠藤選手
「(Q.どれくらい一日で収穫する)稲刈りのペースによりますけど、とれる時は…3トンくらいですね。これ30キロです」

 収穫後に向かったのは彼らのもう一つの職場、校長室だ。

成田琉晟選手(25)
「スポンサーに毎月月例活動報告書を送っているので、今月こんな試合があって結果どうでしたっていうのを皆さんに送るところです」

 午前中は農作業、午後は事務作業。すべて終わった後、練習は週4回、2時間行うという。

成田選手
「(Q.やっぱり大変ですね)そうですね。同年代で一緒にこうやって仕事して、農業して、事務作業して、寝るまで一緒にいるので。大変は大変ですけど、楽しいの方が割と大きい」

 彼らの楽しみはチームで収穫したコメを食べること。この日はカレーライスだ。

地元の子どもたちとの交流も深めている

 他にも地域での活動がある。週に一度、キッズスクールを開き、地元の子どもたちとの交流も深めている。

大橋選手
「農業で疲れても、子どもたちの笑顔見ると頑張ろうと思います。未来のesDGz OTAKIの選手たちです」 小学5年生
「将来の夢はバスケット選手です」 大多喜町の子どもたちにとってはヒーローのような存在

 チームは現在、18チーム中11位。だが、活躍する選手は、大多喜町の子どもたちにとってはヒーローだ。

小学3年生
「(Q.コーチはバスケット上手?)上手!」 成田選手
「本当?よかった」 彼らの今の目標は?

 バスケットボール選手とコメ農家を両立し日々活動する「esDGz OTAKI.EXE」。彼らの今の目標は…。

遠藤選手
「大多喜町にとって、このチームがあって良かったと思ってもらう。高齢者と子どもたちというところで、憧れの存在じゃないですけど、そんなヒーローになれたらなと思います」

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■町長も期待「移住してくれる人たちが増えてくれると」

■町長も期待「移住してくれる人たちが増えてくれると」

町が抱える課題は人口減少

 「esDGz OTAKI.EXE」の選手たちに、町も期待を寄せている。

 千葉県大多喜町の平林昇町長は、今町が抱える課題は人口減少だとしている。

若者の減少が顕著

 1945年に2万人を超えていた人口は、現在では8000人あまりと半分以下に減少。やはり、「若者の減少が顕著」だと平林町長は話す。

 そこで期待を寄せるのが、バスケットボール選手とコメ農家の“二刀流”生活を行う3人だ。

町長も期待

 平林町長は「大多喜町で農業をしながら生活する魅力を発信してもらい、移住してくれる人たちが増えてくれるとうれしい」と話している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年9月19日放送分より)

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