テレビ朝日は「未来をここからプロジェクト」の一環で22日からSDGs(持続可能な開発目標)企画をお伝えします。二酸化炭素の25倍を超える温室効果があるとされるメタンガスは、稲作が国内で最大の排出源です。田んぼに水を張らないことで排出を抑える取り組みを取材しました。

■メタンの排出を抑える乾田直播

 埼玉県杉戸町の田んぼは、一味違います。通常は水が張っている田んぼですが…、乾いているんです。

 実はこれ、乾いた田んぼで米を作る新しい農業なんです。しかも、地球温暖化対策の秘密兵器になるかもしれません。

ヤマザキライス 山崎能央社長
「僕らも知らなかった世界だが、水を使わず稲作をすることで、メタンの発生がかなり抑制できることが分かってきた」

 メタンとはメタンガスのこと。二酸化炭素の25倍の温室効果があるといわれています。つまり、メタンが発生することで、地球を温めるスピードが速くなるのです。

 驚くことに、日本で1年間に排出されるメタンの44%が私たちが食べるコメを作る田んぼから出ているといいます。なぜ、稲作でメタンが発生するのでしょうか。

ヤマザキライス 山崎能央社長
「今まで水を張っていると、そこからメタンが大量に発生していた」

 土の中にあるメタンを発生させる菌は酸素が少ないと活性化する特徴があります。従来の水田のように水を張ると、酸素を遮断して大量のメタンが生成されるのです。

 そこで、救世主となるのが「乾田」です。水がほとんどないため、土の中まで酸素が行き渡ります。その結果、菌の活性化を防ぎ、メタンの生成を大幅に減らすことができるというわけです。

ヤマザキライス 山崎能央社長
「(Q.(メタン)削減に貢献、具体的には?)(乾田を)始める前は15%くらいメタンの発生量が下がると思っていたが、色んな調査をしていくうちに、なんと87%も下げられることが分かってきた」

 ただ、メリットがあるにもかかわらず、日本ではほとんど行われてこなかった「乾田」での米作り。それを可能にしたのが技術革新で生まれた栽培方法です。

 その鍵となるのが、ビールです。

アサヒバイオサイクル アグリ事業部長 上藪寛士さん
「こちらがビール酵母の資材」

 ビールを生産する過程でできる「ビール酵母」を使った、この肥料。種もみに吹きかけ、田んぼにまくことで、驚くべき効果が生まれるといいます。

アサヒバイオサイクル アグリ事業部長 上藪寛士さん
「ビール酵母資材(肥料)は、植物に刺激を与えることで細かい根を張らせる効果」

 水とビール酵母で植物の根の成長速度を比べた実験では、ビール酵母の方が根が育っていることが分かります。

 ビール酵母の肥料を与えると、稲が病原菌に感染したと勘違いし、病気に対抗しようと根の成長が促されるそうです。

 また、菌根菌という植物の根に感染する菌の一種を与えることで、菌糸を伸ばして栄養を集めやすくなるといいます。

 寒すぎて米作りに不向きだった網走でも、ビール酵母と菌根菌を使うことで米の収穫に成功しています。

■コストも手間も減る“新しい農業の形”

 「乾田」のメリットは他にも…。水田では欠かせない田植えや水の管理などの必要がありません。

 この農家では設備コストが4割、労働時間は7割減ったそうです。

ヤマザキライス 山崎能央社長
「想像を絶するほど仕事が減った。これからどんどん耕作面積が増えていくなかで、ぜひ導入していきたい。食料を作りながら地球環境に優しい、かつ貢献できることが新しい農業の形として非常に素晴らしいと考えている」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。