(ブルームバーグ):日本銀行が20日に結果を発表する金融政策決定会合では、現行政策の維持が見込まれる中、植田和男総裁の記者会見を中心とした情報発信から、追加利上げの時期やペースを探ることになる。
前回の7月会合での利上げ決定後に生じた金融市場の混乱や米国経済の不透明感の強まりなどを踏まえ、日銀の経済・物価見通しとリスクに関する認識変化の有無、先行きの金融政策運営についての見解が焦点となる。
ブルームバーグが6-11日に実施したエコノミスト調査では、全員が今回会合での政策維持を見込む一方、7割近くが年内利上げを予想した。植田総裁は市場変動後、不安定な状況にある市場動向を極めて高い緊張感を持って注視しつつ、経済・物価が日銀の見通しに沿って推移すれば利上げを進める姿勢に変化はないと説明。利上げ継続姿勢を堅持している。
米連邦準備制度理事会(FRB)は18日に0.5%の大幅利下げに踏み切る一方、パウエル議長は今後の利下げを急がない姿勢を示した。これを受けて海外市場でドル・円相場は乱高下。8月初めに急落した日本の株式相場は回復傾向にあるが、ボラティリティー(変動率)が高止まりしている。
FRBの金融政策が4年半ぶりに利下げ局面入りした中で、米国の経済と金融政策の行方が当面の市場動向と日銀の金融政策運営を左右する可能性があり、植田総裁がどのような見解を示すのかが注目される。エコノミスト調査では、米利下げは日銀の政策金利パス(経路)に何らかの影響を及ぼすと56%が回答した。
大和総研の久後翔太郎シニアエコノミストは、米利下げで円高が方向感として強まっていくとし、想定以上に円高が進む場合は「企業収益の悪化懸念を通じて来年の春闘での賃上げ率を押し下げるリスクがある」と指摘。日銀が目指す賃金・物価の循環的上昇への短期的な影響は大きくないとしながらも、円高による悪影響への懸念が広がる状況になれば「利上げが遅れる可能性はある」との見方を示した。
日銀の利上げパスを展望する上で、経済・物価に対して中立的な名目金利の水準(中立金利)への言及も注目される。田村直樹審議委員は12日の講演で、中立金利について「最低でも1%程度だろう」と言及した。植田総裁は中立金利には不確実性があると繰り返しているが、会見で改めて見解を問われる可能性がある。
ブルームバーグ・エコノミクスの見方
「われわれの基本シナリオでは、今週の会合で政策は据え置かれるが、植田和男総裁は記者会見で10月の追加利上げの可能性を残すとみている。しかし、不安定な市場を理由に日銀が利上げを時間をかけて行うと示唆する可能性もある」
木村太郎シニアエコノミスト
他のポイント
- 大幅な円安修正が進む中で、7月利上げの一因となった物価の上振れリスクは後退しているとの認識が示される可能性が大きい。利上げを急がない理由になり得るが、見通し自体に影響すれば利上げ路線が修正を迫られる可能性も
- 経済・物価が日銀の見通しに沿って推移すれば利上げを続ける方針を従来から示していたが、うまく伝わらず、8月の市場混乱の一因になったと日銀はみている。市場とのコミュニケーションの在り方に言及するかにも注目
- 27日開票の自民党総裁選と新たな首相による早期の衆院解散・総選挙の可能性、新政権の経済・財政政策、米大統領選といった内外政治情勢も市場の関心事。総裁会見で金融政策運営への影響を問われる可能性も
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