備蓄食として注目が高まるパンの缶詰。保存料が入っていないのに賞味期限が5年で、かつ、焼き立てのパンのような食感が続くワケは…?

賞味期限5年の秘密<1>缶ごと焼く

世界で初めて、パンの缶詰を開発した『パン・アキモト』(栃木・那須塩原市)。
ブルーベリーやストロベリー、オレンジ味(各540円)と種類も豊富な缶詰パンですが、賞味期限5年の秘密はどこにあるのでしょうか?

今回も、全国200以上の工場を取材してきた木下さんと一緒に工場に潜入しました!

『月刊食品工場長』木下猛統 統括デスク:
ものすごい特殊な紙を使っているそうなんです」

まずは、生地作りの工程から。
材料は、小麦粉・水・塩・イーストとパン作りの基本的なものですが、卵は使わないのがアキモトのこだわり

卵を入れるパン屋さんもありますが、5年も経つと味が変わる可能性があるため使わず、圧力をかけてこねることでモチモチに。

生地でジャムを包み込んで何層にも伸ばしたら、ここでまたこだわりが。
味にムラが出ないように、計量やコロコロ丸める成形は人の手で行っているのです。

そして丸めた生地を、缶の中に投入!焼いたパンを缶に入れるのではなく、生地を入れた缶ごと焼くのです。実はコレが、保存期間をのばす最大のポイント

『パン・アキモト』藤崎良太工場長:
「日持ちさせるには、いかに缶詰の中に菌を持ち込まないかがミソ。缶ごと焼くことで缶自体も殺菌して作ることができる」

約40分間じっくり焼くことで「悪さをしやすい水分をこの段階でよく飛ばす」のがポイントだといいます。

賞味期限5年の秘密<2>会長のみぞ知る「紙」

さらに“賞味期限5年の秘密”はもう1つ。焼く時に缶の内側に敷く紙です。

一見すると普通の白い薄紙のようですが、「パン・アキモトの中でも会長しか入手ルートを知らない」というほど特別な紙。

耐熱性がありパンに適度にくっつき、水に濡れても破れないーこの紙が、缶にパンがこびりつくのを防ぐだけでなく、おいしさを保つ秘密だといいます。

『パン・アキモト』藤崎工場長:
「湿度が高くなったときに、この紙がしっかり水分を吸収し、逆に乾燥してくると紙が水分を放出してくれる」

紙が障子のような役割を果たしパンを“しっとりおいしく”長持ちさせるのです。

また、災害時など水が使えないときでも、紙があれば直接パンに触れずに食べられるのもポイントです。

製造から4年経ったパンの味は…

無菌状態で焼きあげ、特別な紙が“守る”賞味期限5年の缶詰パン。試食させてもらうと…

『月刊食品工場長』木下さん:
「フワフワ。甘味もちょうどいいし香りもすごく良い」

THE TIME,マーケティング部 原千晶部員:
「しっとりしてて美味しい!」

香りも食感もパーフェクトという2人ですが、試食したものが「製造から4年経ったもの」と聞きビックリ!焼きたてと比べてみると、違いは歴然でした。

『月刊食品工場長』木下さん:
「焼き立ては、まだ馴染んでいない感じ」

そう、パンの缶詰は製造から約1週間で水分が馴染み、保存した方が美味しくなるんです。これも、パンを守る“特別な紙”のなせる業。

試行錯誤の連続…「紙」を求めて海外に

「元々は普通の街のパン屋さん」だったという『パン・アキモト』が、缶詰のパンを開発したきっかけは1995年に起きた阪神・淡路大震災でした。

栃木から2000個のパンを持って被災地へ行くも、パンが日持ちせずほとんど役に立てず…。そこで保存期間が長いパンを作ろうと決意したといいます。

『パン・アキモト』秋元義彦会長:
「いきなり缶詰じゃなくて、真空パックを考えたり。パンは潰れても戻ると思っていたけど戻らなくて、色んなことを試行錯誤した」

諦めかけていた時、配達先の隣に偶然あった「たけのこの缶詰工場」を見て、パンでもできるかもと研究を始めます。
「いい紙が見つかれば、うまくいきそう」というところまで辿り着きますが、個人の思い付きで製紙メーカーの協力を得るのは難しく…

『パン・アキモト』秋元会長:
「とある商社の方が海外で探してくれた。なので社員も知らない紙」

会長が“紙様”とよぶ、ある国で作られた紙と出会い見事パンの缶詰が完成!自治体や企業の備蓄食として大ヒットとなり、今では月10万缶を販売し、年間売り上げは5億円超えになりました。

ただ、賞味期限が5年もあるので、そうそう買い替えてもらえないのでは…?
これも、ある取り組みでクリアできているといいます。

『パン・アキモト』秋元会長:
「買ってくれたお客様に協力を要請するんですが、賞味期限が切れる前に回収してチェックをして、被災地や食料難のところに送っている」

4年に1度、賞味期限が残り1年程度になると自治体や企業に新しいパンを買ってもらい、古いパンを回収。まだ1年期限があるパンを、被災地や食料難の国に無償で提供しているのです。まさに備蓄・フードロス削減・社会貢献を結びつけた取り組み。賛同する企業も増えているとのことです。

缶詰パンで“女子トーク”も弾む?

スタジオでは日向坂46の松田好花さんと、火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』に出演する俳優・松本若菜さんが試食。

まずは、缶から取り出してビックリする2人。包み紙の上からパンを“ぷにぷに”しながら「もうね、持った感じしっとりフワフワ!」「本当だ!ふわふわ」「もうすでにいい香り~」と女子トークをしながら、かぶりついた。

すると、製造から4年経ったパンを食べた松本さんの第一声は「え?」。信じられないという表情で、「4年前??えっ?焼き立てパンみたい」と目をむいた。松田さんも「普通にパン屋さんで買うパンって感じ」と驚きの声。

「おいしい~」と、食べ続ける2人に宇賀神メグアナが「これなら家事をしない西園寺さんもピッタリですね」と投げかけると、松本さんは「ほ~んと、ぴったり」とカメラ目線でこたえ、スタジオを笑わせた。

(THE TIME, 2024年9月17日放送より)

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