(ブルームバーグ):急拡大するプライベートクレジット業界で、資金調達の勝ち負けが鮮明になりつつある。

インターミディエイト・キャピタル・グループ(ICG)は先週、欧州のダイレクトレンディング(直接融資)ファンドの資金調達を152億ユーロ(約2兆3700億円)で終えた。これは、この地域で確保されたこの種の資金としては過去最大規模だ。

7月にはアレス・マネジメントが、同様の米国戦略でレバレッジを含め340億ドル(約4兆7900億円)という記録的な調達額を達成している。

一方、フィデリティ・インターナショナルやポーレン・キャピタルなどは始動につまずき、欧州でのダイレクトレンディング活動を今年停止した。

フィデリティ、欧州のダイレクトレンディング業務停止-人員を解雇

 

1兆7000億ドル規模のプライベートクレジット業界は好調だが、こうした対照は、その恩恵にあずかっているクレジットマネジャーが一段と絞られるようになっていることを示唆している。

アポロ・グローバル・マネジメントの欧州責任者ロブ・セミナラ氏はパリで最近開催された会議で、「大手企業と話をしたいのであれば、最大級に潤沢な資本が必要だ」と述べ、「世界の大企業との関連性の高い大手のクレジットマネジャーは、今後も規模を拡大していく」との見通しを示した。

ブラックストーンやアポロ、ゴールドマン・サックスの資産運用部門などの業界大手は、資本構成全体にわたる資金調達を提供できる能力を備え、いわゆる「ワンストップ」としての債務ファイナンスのフランチャイズを拡大。

これは、借り手との関係において有利に働くとセミナラ氏は指摘した。

慎重姿勢

投資家は、資産運用会社について慎重な見方を強めている。長期にわたる金利上昇は、クレジットファンドにとってもろ刃の剣(つるぎ)だ。高いリターンが得られる一方で、融資先の企業がストレスにさらされるリスクも高まっている。

事情に詳しい関係者によれば、資本獲得競争が激化する中で、複数の中堅運用会社が新規ファンドの資金調達に苦しんでいる。

 

運用各社のポートフォリオが試され、市場参加者も貸し手のパフォーマンスに差が生じ始めると想定している。

ICGのダイレクトレンディング共同責任者マシュー・ビジェ氏はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「市場がより複雑になるにつれ、投資家は実績のあるダイレクトレンディングファンドや、信用サイクルを通じて投資を行う規模と能力を備えたファンドを選ぶようになっている」と語った。

ハーバード大学ロースクールのジャレド・エリアス氏とデューク大学ロースクールのエリザベス・ドフォトネー氏は7月の研究論文で、「プライベートクレジット資産運用会社は、商業銀行およびシンジケートローン市場の両方から市場シェアを奪い、企業債務の状況を一変させている。また、これらの伝統的な仲介事業者がリスクが高過ぎると見なしていた新規の借り手にも触手を伸ばしている」と分析。

「その結果、企業金融において一段と重要な役割を果たす資産運用会社は、恐らく1ダースほどしかない少数精鋭のクラブとなっている」と論じた。

 

原題:Private Credit’s Winners Are Becoming Clearer: Credit Weekly(抜粋)

--取材協力:Kat Hidalgo、Francesca Veronesi.

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