注目が集まっている「付加価値米」とは、どんなお米なでしょうか?今年入社した、「新米」アナウンサーのMBS河西美帆が取材しました。訪れたのは、大阪市平野区の西川米穀店。店主の西川信一さんは、“お米の博士号”とも言える、『五つ星お米マイスター』の資格の持ち主です。

 店内にはこだわりのお米がずらり並びます。西川米穀店の西川信一さんは、「常時20種類ぐらいのお米を取り扱っている」と話します。

 この店に置いている米の7~8割は、農薬に比べて使用回数を通常の半分以下に抑えたり、特殊な栽培方法で育てたりした、“付加価値米”です。

レンゲ栽培でつくられる「米」がある

(西川信一さん)「この『夢つくし』は福岡のお米ですが、“レンゲ栽培”という方法で栽培したものです」

 レンゲ栽培とは、田んぼに苗を植える前にレンゲの花畑を作り、その後、レンゲの花を土に混ぜ込んで有機肥料にして育てる“安全・安心”をうたった自然農法です。普通のお米との価格差は…

 (西川信一さん)「価格は1~2割ぐらい高くなっちゃいますね。ただ、付加価値があることをお客様も理解していただいていて、少々高くても(付加価値がある)お米を食べたいという方が多いです」

付加価値米は「農家さんがどう売ろうか?」

 (西川信一さん)「お米の消費が減ってきて、農家さんが『どう売ろうか』という中で、付加価値をつけてお米(白米)に対して差別化しています。付加価値がある、スーパーに置いていないような特別なお米を販売していくのが1つのポイントかなと」

 今は米不足により米が高値となっていますが、米農家というのは普段は「もうかりにくい仕事」だと専門家は話します。

 農業経済学者の小川真如さんによりますと、米は栽培量自体が非常に多く価格競争も激しいため、どの米農家も値上げしにくいそうです。また、小さな農家ほど肥料などを大量購入できず、コスト削減が難しいといいます。そのため、他よりも高く売れる付加価値米を育てる米農家が増えてきているのです。

隠岐島でつくる「藻塩米」

 西川さんのお店では近年、健康志向や食感・味といった付加価値を求めるお客さんからの問い合わせも増加しているそうです。このお店で扱っている中で、もうひとつ、特徴ある栽培法をしているお米を紹介してもらいました。

 (西川信一さん)「こちらの『きぬむすめ』は“藻塩米”なのですが、アラメという海藻を煮詰めて、水溶液にして散布する方法で栽培したお米です。ミネラル分が豊富になり、食感がよくなります」

 実際に、島根県の隠岐島で藻塩米を作る農家の村上淳一さんに聞くと…

 (米農家 村上淳一さん)「隠岐島には限られた田んぼしかない中で、大きい産地と勝負していくには、こだわって高く売るしかない。今から約20年前に、何か付加価値をつけて売る方法はないかという中で、『浜辺に打ち上げられた海藻を肥料にしていた』という文献を目にしました」

 隠岐島では昔から、肥料として海藻を畑にまく習慣があり、それを米に応用して、稲が枯れない塩分濃度を独自に研究したそうです。こうして育てたお米には、普通のお米よりもマグネシウムが約2割多いなど、ミネラル分が豊富に含まれていることが島根大学の調査でわかっています。

 こだわって作ることで価格も「島根県や隠岐島の一般のお米と比べて、1.2~1.3倍ぐらい(の値段)」だということです。

岡山・真庭市のプリンセスサリー

 農家のこだわりが詰まった付加価値米には企業も注目。『無印良品 グランフロント大阪店』の一角には、“国産長粒米”の『プリンセスサリー』(300g・540円<税込み>/2kg・1680円<税込み>)が並んでいます。

見た目が細長くパラパラした長粒米と、もちもち感のある短い日本のお米を掛け合わせてできたお米で、長粒米と日本のお米の“いいいとこどり”をしたような食感に付加価値があるといいます。

 いったいどんな味なのか、なぜこの品種を選んだのか。プリンセスサリーを育てる岡山県真庭市の米農家・矢萩正孝さんを訪ねました。もともと普通のお米を作っていた矢萩さんは、2年前から国産長粒米・プリンセスサリーの生産に取り組んだといいます。

 (米農家 矢萩正孝さん)「中山間地には非常に米作りに適さない湿地帯のようなところがあり、そのあたりの収量がどうしても低い。お米に付加価値をつけたい」

そのため、普通のお米と比べて値段は「今までの倍ぐらいの値段」で設定しているそうです。

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