(ブルームバーグ):パチンコといえば、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言の影響を最も受けた業界の一つで、縮小した市場はいまも好転の兆しが見えない。待っていても状況は打開しないと各社知恵を絞るが、パチンコの射幸性を高齢者福祉の場に生かす取り組みで注目を集める企業がある。
逆風吹きすさぶ中、愛知県名古屋市の老舗パチンコメーカー、豊丸産業は認知症予防や健康促進といった高齢者福祉に役立つ製品の開発を目指して事業に取り組む。販売統括部長の亀井裕人氏は、パチンコ人口が「減少しているのは感じており、何ができるかといろいろ工夫しながら進めている」と話す。
日本遊技関連事業協会のデータブックによると、パチンコの市場規模は2022年に14兆6000億円だったが、05年ピーク時の34兆9000億円と比べれば大きくしぼんだままだ。昨年10月にはパチンコホール「GAIA」を経営する関連企業7社が民事再生法の適用を申請して倒産した。帝国データバンクによると負債総額は1794億円と、パチンコホールとして過去最大となった。
専門家の見解を元に同社が開発したパチンコ風レクリエーション機器は、ハンドルを手で回すタイプのほか、足元のペダルをこぐことで玉が発射されるタイプまでさまざまあり、ゲーム性を調整することで無理なく各種身体機能の向上を目指すことができるという。
パチンコの脳への影響について研究している公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授は、パチンコ台で遊ぶことは高齢者の認知機能を高める効果が期待できると指摘する。「ひたすら予防活動をさせられるより、自分が遊びたいようにやりながら介護予防活動にもなる方がはるかに良い」。
パチンコを打つ高齢者
一方、脳や認知機能向上のため、ホールを引退した本物のパチンコ台を介護に取り入れた企業がある。東京都港区に本社のある日本シニアライフは、パチンコを初めマージャンやカードゲームなどの娯楽を高齢者にむけて提供する「デイサービス・ラスベガス」を全国に22施設展開する。
森薫社長は「テンションが高くなることをやりたいんです、高齢者は」と話す。大当たりの確率は一般のホールで打つ台と同じで、釘も特段甘いわけではなく、そこら辺はルールを守りながらやっているという。
客の2割は各施設に約10台あるパチンコ台を利用し決済は模擬通貨でなされるが、延べ7000人の契約者の中にギャンブル依存症になった例はない。森氏は、従来の「つまらない」モデルではなく刺激を受けて楽しむサービスを提供したかったと話す。
篠原教授の研究から、70代でパチンコをする人たちは同世代のしない人たちに比べて認知機能が高いことが分かっている。ギャンブル好きの減少や若者離れで先の展望しにくいパチンコ業界だが、進行する高齢化社会に巻き返しのチャンスを見いだすかもしれない。
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