永平寺町の酒蔵が、2024年で125年周年を迎えるのを記念し、特別な酒を造る取り組みをスタートさせました。杜氏が目指すのは、地元の特別栽培米を使い永平寺の風土が感じられる酒です。そこには、どんな思いが込められているのでしょうか。
2024年で創業125周年を迎える永平寺町の酒造会社「田辺酒造」。代表銘柄の「越前岬」は、これまで様々なコンテストでグランプリや金賞を受賞してきました。
田辺酒造の杜氏・田邊丈路さん:
「少量、手作りこだわっていて、昔ながらの和窯でコメを蒸して、土蔵で発酵させ、槽絞り(ふなしぼり)という昔の、酒袋を重ねていく絞り方で全て造っている」
125年前から代々受け継がれてきたこだわりの酒造り。昔から変わらないものの一つが土蔵です。
田辺酒造の杜氏・田邊丈路さん:
「酒を発酵させる仕込み蔵には、土壁に見えない酵母や菌が生きている。だから蔵の特徴として生かしていこうと、昔から手を加えず守っている」
では、125年周年を迎えるのに合わせ、新たに作る酒とは一体どんなものなのでしょうか。
田辺酒造の杜氏・田邊丈路さん:
「今までも福井県産米のコメ使っているが、地元の永平寺町のコメは少なかった。今回はオール永平寺で土地の風土に根差した酒を、125周年に造ってみたい」
永平寺の水とコメで仕込む特別な酒。原料には、農薬も化学肥料も使わず育てた「特別栽培米」を使います。
8月下旬、田んぼではイネが黄金色に実っていました。特別栽培米を育てるのは、冬に蔵人として酒造りに携わっている野坂さんです。長年、自然栽培に取り組んでいますが、農薬も化学肥料も使わない米作りは、酒米の場合、特に難しいといいます。「酒米は、(酒を)造る時に削らないといけないので、粒が大きくないと商品価値として適さない。充実した実になるように育てるのが大変」と話します。
農薬や化学肥料が無かった時代と同じコメ作り。“昔と変わらない酒造りをしたい”という思いを、コメ作りにも反映しました。
野坂さんが丹精込めて育てたコメを前に、田邊専務は「やっとお酒に変わる。いいお酒にしないといけないなと思う。野坂さんも蔵に入るので、みんなでいいお酒を造りたい」と意気込んでいました。
完成した酒は今回初めて、人気通販サイト「マクアケ」での先行販売を試みます。この通販サイトで売っているのは、ほとんどが完成前の商品で、生産者の思いに共感した人が、先に代金を払うことで商品づくりを「応援」する仕組みです。
田辺専務:
「店頭販売では『無農薬でコメにこだわって作りました』とお客さんに伝えるのが難しいので、色んな人に知ってもらうきっかけの一つとして、今回こういう形をとった」
販売ページには、商品説明だけでなく、蔵の特徴や作り手の思いがびっしりと綴られています。9月17日から販売を受け付け、11月から醸造を開始する予定です。
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