(ブルームバーグ):日本銀行出身で物価研究が専門の渡辺努東大大学院教授は、日銀が利上げの論拠としてきた理論に従えば、次回の利上げは市場予想よりも前倒しで実施される可能性があるとの見方を示した。

渡辺教授は5日のインタビューで、消費者物価の動向は「2%を大きく下回るような数字にはなっておらず、日銀が展望リポートで示した姿と近いのは間違いない」と指摘。日銀が「経済・物価見通しが実現する場合は利上げを行う」としている以上、例えば9月の金融政策決定会合での再利上げも理論的には可能と述べた。年内に2回の利上げもあり得るとした。

次回の利上げ時期については、ブルームバーグが8月に行った特別調査で、回答した34人のエコノミストのうち41%が12月、21%が10月などと予想した。7月末の利上げ以降、米経済の後退懸念も相まって金融市場が一時大きく不安定化した中で、日銀の政策正常化の道筋への注目度が高まっている。

植田和男総裁は先月23日の国会の閉会中審査で、市場は引き続き不安定な状況にあり、極めて高い緊張感で注視していくとしつつ、経済・物価が日銀の見通しに沿って推移すれば利上げを進める姿勢を改めて表明した。

渡辺教授は「見通し実現の場合に利上げする」という日銀の理論について、「なぜオントラック(順調)だったら利上げするのかということが全く分からない」と話す。日銀がどのような原理で行動しているのかが理解されなければ、利上げ後に再び市場の混乱を招く可能性があると警鐘を鳴らした。

金利見通し公表を

政策金利が1%程度まで引き上げられた場合でも賃金や物価への大きな影響はないと予想する渡辺教授だが、全般的な消費の弱さや物価の状況を踏まえれば、早期利上げは望ましくないとの立場だ。

7月の政策変更についても「利上げするとは全然思っていなかった」と振り返る。円安対応や政治的な背景から日銀が利上げに踏み切ったとみる向きも一部にいるが、渡辺教授はこうした見方を否定する。

不況などのショックが訪れた際の準備として考えると、「今利上げしておくというのは理屈がないことではない」としつつ、「日銀にはやはり金利を上げたいというDNAがある」と分析した。

今後、市場との対話を強化するための一案として、米連邦準備制度理事会(FRB)のように日銀も、物価や国内総生産(GDP)に加えて金利の見通しを公表すべきだとも提案した。

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