化粧品業界で異変が起きています。新店舗オープンの裏側から、生き残りをかけた大手化粧品メーカーの戦略を追いました。
東京・原宿の新たなランドマーク「ハラカド」。ここに先月、大手化粧品メーカーがこれまでにない様々な試みを取り入れた新たな店舗をオープンしました。
機械に名前を入力すると、そこから連想されるオリジナルのメッセージカードをAI(人工知能)が作成してくれます
待つ時間も楽しめるようにと専門のスタッフがラッピングを行うギフトコーナーやスマートフォンを使った順番待ちや商品の受け取りシステムも初めて導入されました。
20代の人
「AIで作るメッセージカード、こういう体験をするのが初めてなので、また来たいなと思いました」
コロナ前まで順調に伸びてきた化粧品業界でしたが、コロナを機に出荷額は3割ほど減少。インバウンド需要も回復しきれておらず、世界3位だった市場規模も去年、ブラジルに抜かれました。
コーセープロビジョン 命尾泰造社長
「日本の化粧品業界の課題は“人口減少”。通常なら市場が小さくなるなか、サービスの充実は新しい世代のお客様を積極的に取り込むことになるので、市場の活性化につながっていくんじゃないか」
百貨店などの化粧品カウンターは店頭まで行って順番を取り、1対1で丁寧な接客を受けるというのが一般的で、店のデザインや椅子などは女性向けに設計されています。
しかし、今のZ世代が重視するのは「タイパ」、つまり費やした時間に対する満足度が何より大切で、化粧をするのも女性だけではありません。
この店舗の企画を任されているチョウ・イテキさん。入社6年目の若手社員です。
化粧品業界の常識を根本的に変える店を作るため、この日も準備に追われていました。
チョウ・イテキさん
「私たちだったら、こういう店やサービスがあったら入りやすいよねとか、あったらうれしいというものを作った」
チョウさんら若い社員の提案で生まれた有料の時間貸しスペース。そ日の気分に合わせて雰囲気を選べ、モノを所有することよりも体験=コトを重視し、その過程もSNSで発信したいZ世代向けに“映え”にこだわったといいます。
ギフトへの関心が高い一方で、待つ時間は苦手なZ世代を念頭に、ラッピングの工程も楽しめるように専門のスタッフを育成し、化粧品業界ではまだまだ遅れているデジタル化も取り入れました。
そして迎えたオープン当日。この店ならではの“体験”をした人は…。
20代の人
「買うだけならネットの方が早いし安いので、わざわざ来る必要性がないなかで、ここでしかできないこととか、家族で過ごす時間みたいなのを含めて、それが体験になってるのはいいなと」
人口減少待ったなしの日本で活路をどう見いだすのか。新たな顧客獲得に向けた化粧品業界の挑戦が始まっています。
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