(ブルームバーグ):革新的なテクノロジーが登場し、それを代表する一握りの銘柄が急騰すると、2匹目のドジョウを狙う一連の同類企業も株高の恩恵にあずかる。しかし時が経てば本物と偽物の違いは鮮明になる。
直近の例が人工知能(AI)だ。少しでもAIに関連してさえいれば、そうした企業の株ほぼ例外なく買われてきた。スーパー・マイクロ・コンピューターやルーメン・テクノロジーズは今年、250%を超える上昇率を記録したが、投資家はこうした「人気AI株」の一部を手放す段階に来ている。
マホニー・アセット・マネジメントのケン・マホニー最高経営責任者(CEO)は「勝ち組と負け組の仕分けが始まった」と話した。
スーパー・マイクロとルーメン、ソフトバンクグループが支援するシンボティックは、いずれも弱気な調査リポートの標的となり、8月末に急落した。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは4月、AIの可能性について熱弁したが、弱気な調査リポートはこれを否定するものではない。しかし株式市場にかけられた魔法ではないと指摘している。歴史がそうだったように、成功までの道は険しい。
AI半導体大手エヌビディアの決算に対する反応は先週、市場がいかに紙一重であるかを物語る。予想を上回る決算に対して株価が6.4%も下げたのは、2023年の年初から700%余り上昇してきた快進撃で、単に予想を上回るどころか予想を破壊するほどの好決算に投資家が慣れてしまったからだ。マホニー氏によれば、エヌビディア株は「完璧な決算を前提に価格がついていた」ため、3兆ドル(約437兆円)の時価総額を抱える同社が2000億ドル相当の売りを浴びるのは時間の問題だった。
それでもエヌビディアをはじめ「マグニフィセント・セブン」に属する大型AIプレーヤーはこれまでのところ、決算と成長における一貫性をおおむね維持していると、マホニー氏は指摘する。そこがスーパー・マイクロなどと異なるという。
スーパー・マイクロなどは一貫性のなさに株価急騰が相まって、空売り投資家による打撃を受けやすくなっている。ファイバーネットワークを手がけるルーメンは、「驚異的な債務負担を抱えつつ、売り上げと利益率のトレンドが悪化している」とケリセール・キャピタルに指摘された。7月に約1ドルから6.50ドルまで急騰していた株価は、ケリセールによるショート発表で約5ドルまで下げた。
倉庫用ロボット技術会社のシンボティックは、2週間足らずで23%株価が下げた。同社施設では何ら活動が見られないことがドローン(無人機)の画像で示されたとするリポートが、株売りのきっかけだった。
スーパー・マイクロの広報担当者はブルームバーグニュースの問い合わせに「当社はうわさや臆測についてコメントしない」と回答。ルーメンの担当者はAIの成長が同社のファイバーネットワーク需要を高めると述べた。シンボティックに電子メールでコメントを求めたが、返信はない。
ヒンデンブルグによる攻撃は続く。8月29日には「学習と作業自動化のための応用AIプラットフォーム」を自称するiラーニングエンジンズ・ホールディングスについて、財務報告書の数字を偽っていると非難した。同社は誤解に導くリポートだと反論したが、株価は53%下げた。
ガベリ・ファンズのポートフォリオマネジャー、ジョン・ベルトン氏は「株式市場は常にスピードを出し過ぎ、遠くまで行き過ぎた後に、消化の段階に入る」とインタビューで指摘する。「これら多くの銘柄は現在、健全な消化の段階だ」と述べた。
かつて快調に飛ばしていたAI株が下落し、関連企業のバリュエーションに疑問符が付き始めたことは、AIの価値が最終的にどれくらいになるのか、どの企業がその恩恵を享受できるまで残れるのか、という疑問が広がっている示唆になっている。
「これがどれほどの規模になるのか分からない。こういう類いの環境は、市場で局地的に過剰な状況を生み出しかねない」とベルトン氏。「生成AIの投資サイクルは現在も続いており、このサイクルの長期的な概要を把握するのは難しい」と述べた。
原題:Shorts Are Circling Some of the AI Boom’s Biggest Question Marks(抜粋)
--取材協力:Peyton Forte、Ryan Vlastelica.
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