(ブルームバーグ):出だしはひどかった。しかし、新型コロナ禍以降で最も大きなボラティリティーに見舞われてから4週間がたち、8月の相場は大きく回復した。
確信の度合いは資産全般にわたって急上昇している。一例を挙げれば、米国債、企業クレジット、米国株それぞれに連動する上場投資信託(ETF)はそろって4カ月連続で値上がり。これは少なくとも2007年以降で最長の上昇局面だ。
S&P500種株価指数はこの1年で25%上昇。ネッド・デービス・リサーチとブルームバーグが集計した過去70年分のデータによると、最初の利下げが近づいていると予想される時期に、同指数がこれほど上げたことはかつてなかった。
景気やインフレ、またそれらに対する中央銀行の行動については不透明感もある。それにもかかわらず、投資家は買い姿勢を強めている。米金融当局が行動を起こす前でも、既に債券市場は複数回の利下げを織り込んでおり、デフォルト(債務不履行)リスクを測る指標は低下。株式相場の大幅上昇は、経済が活発になるのは間違いないとの見方を反映している。
S&P500種は8月に2.3%上昇。米長期国債に連動するETFは1.8%、投資適格級債は1.5%それぞれ上昇した。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が政策金利を引き下げ、健全な経済を実現すると、クロスアセットの強気派が確信していることを、これらの値上がりが示している。経済データは最近強弱が混在しているが、結局のところはそうしたデータが影響を及ぼす。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントでマルチセクター投資を率いるリンゼー・ロスナー氏は「全てがうまくいかなければいけない」と指摘。「経済成長がトレンドに沿う、あるいはトレンドを上回り続ける必要がある。労働市場は熱過ぎず、冷え込み過ぎてもいけない。それによって消費者は消費を続けることができる。これら全てに完全なバランスが取れていなければならない」と述べた。
コンセンサスのもろさ
8月初旬に見られた市場の混乱は、コンセンサスのもろさを示した。7月の雇用統計という一つのデータが混乱をあおり、恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は一時65を上回った。
8月雇用統計は9月6日に発表される。非農業部門雇用者数は、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想で10万人増から20万8000人増の範囲、予想中央値は16万5000人増となっている。
市場では現在、景気がほぼ唯一の関心事だ。今週は米国の製造業に関するデータや新規失業保険申請件数なども発表され、それぞれがセンチメントに影響を及ぼす可能性がある。
8月の混乱から教訓を得るとすれば、人工知能(AI)関連へのロングポジションや円安を利用した取引など、コンセンサスに対する賭けは突如として巻き戻される可能性があるということだ。
思い起こしてほしい。フェデラルファンド(FF)金利先物が織り込んでいた年内の米利下げ回数は、インフレ懸念が弱まっていた年初にはおよそ6回で、3月にも最初の利下げがあるとみられていた。思っていたよりインフレが根強いことが分かってからはそうした見方は後退し、4月までには年内利下げはわずか1回との予想に変わった。
そして現在のコンセンサスは、9月に利下げが開始され、年内計1ポイントの引き下げがあるというものだ。
オーシャン・パーク・アセット・マネジメントのジェームズ・セント・オービン最高投資責任者(CIO)は「米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者自身が示すドットプロット(金利予測分布図)、および市場の予想はどちらも常に間違っているのが現実だ」と指摘した。
原題:Once-In-Lifetime Wall Street Rally Raises Soft-Landing Stakes(抜粋)
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