舞台は、大阪府大阪市。都会のウナギの寝床に、あえて「離れ」を作った家を紹介する。
住人(アルジ)は、夫妻と高校生の息子の3人家族。息子の誕生を機に土地を購入し、建築家の夫が家を建てた。2階の大きな窓が印象的な建物があるのは間口5メートル、奥行き18メートルという縦長の土地。住まいはいわゆる“ウナギの寝床”だ。
玄関を開けると、上まで一直線につながる長い階段が目に飛び込む。そして靴のまま上がっていくと、天井のない吹き抜けのスペースが出現する。ここは、建物の約3分の1もの面積を使った「中庭」。そして庭の反対側には「離れ」がある。
自然が多い場所で生まれ育った夫は、自宅にも実家と同じく、四季を感じられるような中庭と離れを作りたかったという。そんな理想を都会で実現させ、中庭があるおかげで両隣を家に挟まれていても明るく開放的になったのだが、妻は当初、雨が降ると濡れるこのスペースは不満だったという。
母屋側にある約15帖のリビングダイニングキッチンは、昨年、大幅にリノベーションしたもの。息子も大きくなったので“大人リノベ”したという。キッチンで目を引くのが、175センチ角の大きな正方形の調理台。レンジやスパイスラック、食洗機、ゴミ箱などあらゆるものを内蔵している。さらにテーブルも兼ねており、キッチンの高さ90センチに合わせてテーブル側には高いスツールを置いて、調理する人と座る人の視線が合うようにしている。
正方形の調理台は、2人でコンロやシンクを同時に使っても横並びにならず、L字に向き合って立てるのも大きなメリット。ともにお酒好きで、飲みながら料理を楽しむこともある夫妻にとっては便利な形だ。
通りに面した窓も以前は小さかったが、“大人リノベ”で横3.3メートル、縦1.8メートルの巨大なフィックス窓に。「田舎者だったので、街に憧れて」という夫が、街を思う存分味わうためにこのサイズにしたという。街の景色に溶け込みたいからとカーテンはつけず、夜になると明るい窓の中も風景の一部になる。だがもちろん、外からは丸見え。そのため妻にはさまざまな苦労があったようで・・・。
中庭の先にある離れへは外履きをはいて移動する。離れにはトイレがあり、その隣は和室。主に昼寝をするスペースになっていて、夫妻が母屋でお酒を飲んでいても、息子は静かな離れでぐっすり眠れるとか。
3階の独立した離れにあるのは、6帖の息子の部屋。外から帰ると、そのまま外階段を通って部屋に入ることができる。まるでひとり暮らしのような自立心が芽生える環境の影響なのか、息子は高校生にしてブランドを立ち上げ、自分でデザインした服をSNSで販売しているそう。
一方、1階の駐車場の奥にも学習室がある。受験を控えている息子にとっては誘惑の多い自分の部屋よりも、この部屋の方が集中力が上がるという。また夫も現在、建築の仕事をしながら早稲田大学の通信授業を受講中で、同じ学習室を利用。そんな父の姿も息子には刺激になっている。
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