(ブルームバーグ):23日のニューヨーク外国為替市場では、ドル指数が下落し、1月以来の安値。円やポンドなど主要通貨の多くは、対ドルで1%余り上昇した。

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで、主要政策金利を引き下げる時が来たと発言。9月利下げ開始に関してこれまでで最も明確なシグナルを送ったと、市場が受け止めた。

円は対ドルで一時1.5%上昇し、1ドル=144円05銭を付けた。パウエル氏の講演開始前に小幅に下落する場面もあったが、その後はじりじりと上値を伸ばした。

ブルームバーグのドル指数は1%安。週間ベースでは4週連続の下げと、2023年4月以降で最長の連続下落局面。

バークレイズの外為ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コニング氏は「パウエル議長の講演が市場の緩和シナリオを後押しし、ドルを圧迫した」と話した。

ラボバンクの外国為替戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は「米当局の重点がインフレ対応から2つの責務のバランスを取る方へとシフトしたことを、パウエル議長は明確にした」と指摘。「9月により大きな幅で利下げをする可能性を低くする内容は講演に含まれていなかった」と分析した。

ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は「ドル売りの勢いは続く公算が大きい」と指摘。9月上旬の「非農業部門雇用者数の発表まで、米国の経済活動とインフレ動向を測るデータをそれほど得られない」と述べた。

ポンドは対ドルで一時1.1%高の1ポンド=1.3230ドルと、2022年3月以来の高値。

株・国債

パウエル議長の発言を好感し、米国株は反発。国債利回りは低下した。

市場は9月利下げ開始を既に織り込んでいたが、利下げの時が来たという議長のコメントがそうした見方を裏付けた。

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パウエル議長はインフレ鈍化の面で進展が見られるとの認識を示したほか、「労働市場環境の一段の冷え込みは望みも歓迎もしない」と述べ、労働市場の減速は「明白だ」と付け加えた。

インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)のクリス・ザッカレリ氏は、「市場はこの講演に満足しているはずだ。決してタカ派的ではなく、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げにゴーサインを出した。その上、必要になれば、より大きな利下げ幅にする可能性も残した」と指摘した。

S&P500種株価指数は1%を超える上昇率。S&P500種の主要な業種別指数は全て上げた。小型株で構成されるラッセル2000指数は3.2%上昇した。

米国債は全年限で上昇。2年債利回りは4%を割り込んだ。金利スワップ市場では年内100bpを超える利下げ幅が織り込まれている。残る3回の会合で毎回利下げをし、そのうち1回は50bpの引き下げになるとの見方を示唆している。

プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は「パウエル議長は利下げサイクル開始の鐘を鳴らした」とコメント。「議長は50bp利下げを事前にコミットしていない。ただ間違ってはいけない。労働市場が一段と鈍化の兆しを示したら、米金融当局は確信を持って引き下げるだろう」と述べた。

ブルームバーグが実施した最新の月間調査では、米労働市場が従来の想定以上に軟化していることから、米連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げはペースが加速し、幅も大きくなるとエコノミストらはみていることが分かった。

市場関係者の多くがパウエル議長の講演に注目していた中、モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏は、9月上旬に発表される雇用データの方がもっと重要だろうと指摘。「米金融当局の行動を決定づけることになるのは労働市場のデータだ。当局者がこれまでにそう言ってきている」とブルームバーグテレビジョンで話した。

原油・金

ニューヨーク原油先物相場は続伸。利下げの時が来たとするパウエル議長の発言を受けてリスク選好ムードが広がる中、買いが優勢になった。

金利低下は経済成長を促し、原油需要の増加につながると、原油トレーダーはおおむね予想している。

ただし、原油は週間ベースでは下落。主要国の景気見通しの弱さが重しとなった。今週公表されたS&Pグローバルの米製造業購買担当者指数(PMI)速報値は、8月上旬に活動が縮小したことを示し、今年の最低水準となった。欧州では主要な産業用燃料であるディーゼルの先物が14カ月ぶりの安値に下げている。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は前日比1.82ドル(2.5%)高の1バレル=74.83ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は2.3%上げて79.02ドル。

金相場は上昇。パウエル議長の発言を受けて一段高となり、スポット相場はオンス当たり2500ドル台で推移した。米国債利回りとドルが下げたことで、金の投資妙味が相対的に高まった。

スポット価格は一時2518.37ドルと、20日に付けた最高値の2531.75ドルに接近。金相場は今月、米金融当局が利下げに近づきつつあるとの観測が高まる中で最高値を更新していた。

TDセキュリティーズの商品戦略責任者バート・メレク氏は「パウエル氏の講演は金や銅、リスク資産全般に歓迎されているようだ」と指摘。「パウエル氏は労働市場のさらなる冷え込みを望んでいない。それは9月に利下げを実施する用意があることを示唆する。労働市場が想定以上に弱いとなれば、25bpよりも積極的な利下げとなるかもしれない」と述べた。

パウエル氏の講演は金利が下がっていくという金トレーダーの予想を裏付けるものだったと、メレク氏は付け加えた。金はさらに上値を伸ばし2700ドルを超えるとTDでは見込んでいる。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時29分現在、前日比26.58ドル高の1オンス=2511.33ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は29.60ドル(1.2%)高の2546.30ドルで終えた。

原題:Dollar Slumps 1% After Powell Touts Case for Interest-Rate Cuts(原題)

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--取材協力:Alexander Nicholson、Robert Brand、Lynn Thomasson.

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