(ブルームバーグ):ウォール街では恐怖よりも強欲が優勢となり、世界をここ数週間震撼させた市場の大混乱も、長期チャート上では単なる乱高下の一つになりそうだ。

しかし、この夏の暴落は、現代の金融市場の最近の傾向が極まったケースとして歴史に刻まれるだろう。ここ数年、ほとんど前兆もなく衝撃的な相場変動が発生する頻度が高まる傾向が見られるからだ。

暴落の後、ボラティリティーは同じく急速に沈静化し、S&P500種株価指数の週間の上昇率は昨年11月以来最大となった。米国債利回りは安定を取り戻した。UBSグループによると、恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は日中ベースで過去最大の上昇を記録した後、過去最速のペースで急落した。

この乱高下を合理的に説明するのは難しい。テクニカルな要因を指摘する人もいれば、米金融当局の政策ミスや人工知能(AI)バブル崩壊に関する懸念を挙げる人もいる。いずれにせよ、レバレッジをかけたトレーダーが相互に影響し合う中で、熱を帯びた市場は周期的に高揚感から絶望へと、そしてまた高揚感へと変化する。

乱高下の頻度の高まりは、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストが「脆弱(ぜいじゃく)性」という言葉を用いて、前世紀に比べて頻度が5倍になったトレンドを説明した2019年以来、金融研究で伸びつつあるテーマとなっている。これには15年の中国人民元切り下げや18年のボラティリティーが急上昇したいわゆる「ボルマゲドン」、新型コロナウイルス禍による混乱も含まれる。

BofAの米国株デリバティブ調査責任者、ニティン・サクセナ氏は「ここ数週間の極端な相場の乱高下は、過去15年間に市場が本質的により脆弱になったことを示す最新の事例と見なすことができる」と指摘。衝撃が極めて急速に消失したことがそれを裏付けると説明した。

過去の暴落時には取引の集中と流動性低下が見られたが、今年もAI関連の一部銘柄が指数リターンを独占し、他の多くの銘柄が人気薄となっている。

また多様な資産が混乱に巻き込まれたことは、市場そのものの性質が要因となったというサクセナ氏の見解を裏付ける。ビットコインやスイス・フラン、投資適格級債券、銅、日経平均株価はいずれも大きな打撃を受けた。サクセナ氏は「脆弱性が市場全体にどれぐらい広がっているか、また極端な需給不均衡によりストレスが高まった時に市場がどれほど機能不全に陥り得るか」ということを学べる教訓だと指摘した。

原題:Wall Street Whiplash Schools Traders on Fragile Modern Markets(抜粋)

--取材協力:Lisa Abramowicz.

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