パリオリンピック™で、ものづくり王国・石川の高い技術力が、日本チームを影で支えている事をご存じでしょうか?

石川・加賀市のニッチトップ企業も、世界最高峰の場で戦いを挑んでいます。その舞台裏に迫ります。

6日から始まったパリオリンピックの自転車トラック競技。長さ250メートルのトラックをいかに早く走るかで競われ、選手の能力とともに成績を左右するのが自転車の性能です。

男子チームスプリントで日本チームは、予選、決勝と相次いで日本新記録を更新しました。順位は5位でメダルには届かなかったものの、個人戦につながる走りを見せました。

好成績を支える“世界最速チェーン”

この日本の好成績のウラには、石川県の企業が持つ技術が大きく関わっていました。

加賀市の大同工業。明治期の1903年から自転車の車輪の部品であるリムの製造を始め、その後、オートバイや自転車のチェーンの製造なども展開、自転車部品では日本を含めたアジア圏で約7割のシェアを占めています。

世界的な自転車部品メーカーの大同工業がパリの舞台に送り込んだのは、日本代表がトラック競技で使う自転車のチェーンです。

大同工業 新家啓史社長
「レースという過酷な環境で使用される部品は性能はもちろん、高い安全性が求められる。世界の頂点をめざし精進したい」

ことし3月に行われた調印式。大同工業が日本代表のオフィシャルサプライヤーとしての契約を結んだのは4年後のロサンゼルスオリンピックを見据えた2029年3月まで。しかし、契約に至るまでには多くの困難がありました。

開発2年 200本以上の試作重ねて…

大同工業 産機技術課 菊知達哉さん
「自転車チェーンという技術を高めていくために、企業としてチャレンジしていこうという趣旨のもと始まった」

大同工業が「世界最速」のチェーンを開発しようと、社内に開発プロジェクトチームを立ち上げたのはいまから2年前の2022年。すでに世界でも高い評価を受けていた大同工業の自転車チェーンでしたが、それでも開発には多くの困難がありました。

大同工業 産機技術課 菊知達哉さん
「ピンの中空化であったり、ブシュの表面処理であったり、軽くする中でチェーンの強度であったり、そこの兼ね合いというのが難しいところだったと思う」

変速機のない自転車を使うトラック競技で重要なのは、いかに抵抗を減らして選手の力をダイレクトに車輪に伝えるかということ。そして、軽くて頑丈であること。開発チームのメンバーたちは200本ものチェーンの試作を繰り返したといいます。

“世界最速”のカギは「軽量化」と「抵抗」

大同工業 産機技術課 菊知達哉さん
「初期設計とか1年かけて、そこから試作を何回も重ねてやっているので、実際考えると2年くらいかかっていると思う。ざっとですけど200本以上は作っていると思う」

自転車のチェーンの構造です。図の中で黄色とグレーで示される複数のプレートがつながって1本のチェーンになります。プレート同士をつなぐのは要となるピンとその外側のブシュと呼ばれる部品です。

開発チームは従来のチェーンから軽量化しつつ、この2つの部品の表面をテフロンで処理することで強度も十分で滑らかで抵抗の少ないチェーンの開発に成功しました。

振り子を使った装置で比較するとその差は一目瞭然です。手前が開発した世界最速のチェーン。奥が従来のチェーンですが、世界最速のチェーンは従来のチェーンと比べ2倍以上の時間、振り続けています。この抵抗の少なさこそが選手の能力を最大限に引き出すために重要な要素なのです。

大同工業 産機技術課 菊知達哉さん
「ブシュの表面処理であったり、それも全部いろいろなピンに表面処理をしたり、ブシュに表面処理をしたりというのを、いろいろレパートリーを作って、それをテストしたりというのは何度もやっていたので、それを踏まえるとだいぶ時間はかかっているかなと思う」

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