(ブルームバーグ):米国と同盟国の先端半導体企業が中国から手を引く一方で、決して先端ではない半導体の市場は中国への依存度を高めている。
自動車搭載チップの大手メーカーにとって中国がいかに重要であるかが、最新の四半期決算で浮き彫りになった。需要を左右する電気自動車(EV)の普及が西側諸国では遅く、在庫が積み上がり、こうしたメーカーは販売に苦慮している。
NXPセミコンダクターズのカート・シーバーズ最高経営責任者(CEO)は、製造業市場が弱い欧米などとは対照的に、今年は中国でのEV販売が「驚異的に伸びた」と指摘。独インフィニオンテクノロジーズのヨッヘン・ハネベックCEOは、EV不振に回復拡大の見通しが依然立たない中で、中国の底堅さは同社の収益を支えていると述べた。米テキサス・インスツルメンツ(TI)は5つのプロダクト市場すべてにおいて、中国事業が最大20%伸びた。
こうした半導体メーカーにとって、中国との関わりを深めるのはもろ刃の剣となり得る。地政学的な緊張が自動車セクターにも広がっているからだ。欧州連合(EU)と米国は中国からのEV輸入に関税を課している。中国政府は9日、EUによる反補助金関税は貿易ルールに反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴した。レガシーチップとも呼ばれる旧世代半導体についても、米欧は警戒の目を光らせている。
テクノロジーを巡る米中間の緊張はこれまでのところ、先端半導体とその製造装置への中国アクセスを米国が制限することが中心となっている。中国はこの対応として、半導体技術の自給自足を目指し、特に車載チップに力を入れている。車載チップは最新鋭の製造プロセスに依存せず、米国による輸出規制の影響をほとんど受けない。従って中国は思うままに国内メーカーによる開発を後押しし、いずれ外国メーカーに取って代わらせる可能性がある。
「EUの強力な自動車産業がインフィニオンやNXP、STマイクロエレクトロニクスといった車載チップ大手を支援してきたように、世界をリードする中国のEV産業はそうした半導体の国内メーカーによる開発を後押ししている」と、ドイツ外交問題評議会のジョン・リー、ヤンピーター・クラインハンス両氏はリポートで説明。こうした動きは中国自動車メーカーの競争力を高め、「欧州企業と各国経済に強い打撃を与えかねない」と指摘した。
中国の自動車半導体メーカーは現時点で、国内需要の約10%しか満たせていないと、リー、クラインハンス両氏は指摘する。この状況はインフィニオンやNXP、STマイクロにとって好都合であり、いずれも売上高の約3分の1を中国で得ている。日本のルネサスエレクトロニクスでは約25%、米TIでは20%の比率で売上高を中国に依存している。
中国政府は比亜迪(BYD)や蔚来汽車(NIO)といった国内EVメーカーに、自動車半導体の国内調達を増やすよう指示している。中国で新設されている半導体生産設備のほとんどが自動車向けのものだ。この結果、欧州委員会は半導体メーカーが中国での市場シェアを大きく失いかねないとして懸念していると、ブルームバーグ・ニュースが6月に報じた。
四半期の決算報告書は通常、地域別の内訳を含まないが、中国市場が欧州の半導体メーカーにとっていかに重要であるか、投資家へのプレゼンテーションではある程度うかがい知ることができる。ルネサスの株価は7月25日の東京市場で約15年ぶりの大幅安となった。営業利益が予想を下回ったことを嫌気した。
TIのハビブ・イランCEOは中国に関して静観していない。7月24日に「当社は競争し、ビジネスを勝ち取ることができる」と述べつつ、その競争が厳しさを増していることを認めた。
「中国勢がやろうとしているのは半導体市場の簡単な部分だけだ、という考えは間違っている」とイラン氏。「彼らは非常に野心的で、教育水準の高い競争相手だ」と述べた。
原題:World’s Top Auto Chipmakers Deepen Their Embrace of China (1)(抜粋)
--取材協力:Debby Wu、Ian King、Craig Trudell.
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