(ブルームバーグ):米連邦公開市場委員会(FOMC)は7月30、31両日に開催した定例会合で、主要政策金利を5.25-5.5%と、二十数年ぶりの高水準に据え置くことを決定した。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、9月にも利下げに動く可能性があるとの見解を示した。

これについての市場関係者の見方は以下の通り。

◎LPLファイナンシャルのジェフリー・J・ローチ氏:

FOMCは今日の声明を使い、市場に今後の利下げに備えさせた。インフレ率が改善し失業率が上昇する中で、当局は利下げを実施しながらも名目FF金利をインフレ率を上回る水準に維持できる。微妙なトーンの変化に市場は好意的に反応するだろう

◎コメリカ・バンクのビル・アダムズ氏:

失業率は上昇基調にあり、雇用者数と賃金の伸びは鈍化している。米金融当局が重視するインフレ率の指標は低下傾向で、眼鏡を外せば2%にさほど遠くないように見える。これらデータは、米金融当局がブレーキから足を離すべき地点に米経済が近いことを示す確固たる証拠だ

◎ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏:

今回の声明は、米金融当局の決定がインフレ率を重視したものから、失業率とインフレ率のウエートをバランスさせたものへとシフトしたことを示している。これにより、確実とは言わずとも9月利下げの扉を開いた

◎GAMインベストメンツのジュリアン・ハワード氏:

・利下げ圧力が強まっているが、米金融当局にとって利下げは容易ではない。信用が非常に大切だ
・景気が軟化し、インフレがさらに鈍化するうちに米当局が何もしなければ、「夢遊病」とみなされるだろう。その場合、「政策ミス」という恐ろしい言葉が飛び交い始めるだろう。この日の決定は想定外ではなかったかもしれないが、9月の決定が注視されると言えば控えめな言い方だろう

◎インカム・リサーチ+マネジメントのスコット・パイク氏:

この日のFOMC声明文では、インフレの進展と労働市場の均衡を巡る表現がともにややハト派にシフトした。これにより、9月会合での利下げに向けた道筋でわれわれはさらに前進した

◎プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏:

バランスの取れた声明は誰も惑わせない。FOMCは言葉の選択をじっくりと考え、2大責務の両面のリスクを新たに強調することで、ハト派的痛みがわずかに加わり、誰もが期待する9月の利下げへの扉を開いた

◎トレードステーションのデービッド・ラッセル氏:

・FOMCは失業率の上昇に言及し、インフレ率は幾分か高いだけに過ぎないとしており、利下げに向けて少し前進した
・データはパウエルFRB議長の方向へ動いたため、議長もそれに追随する準備をしている
・9月の会合まで時間があることから、現時点では以下のような展開が予想される。8月2日の雇用統計と2週間後の消費者物価指数(CPI)が次の大きなポイントだ。これらが順調なら、8月下旬のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でパウエル議長からより明確なメッセージが出てくるだろう

◎LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏:

市場の好反応は、9月会合に利下げが行われるなら、労働市場悪化による緊急性のものではなく、インフレ鈍化基調が継続することによるものだとトレーダーや投資家がみていることを示唆している

◎ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏:

・記者会見は声明文よりもややハト派的だった
・全体として、米金融当局者はただ待つために待っているような印象を受けた。結局のところ、パウエル議長自身が認めたように、全てのデータはすでに議長が見たい方向を指している

◎バンクレートのグレッグ・マクブライド氏:

・インフレ統計が協力的であることが前提だが、米金融当局は9月の利下げに向けてうまく準備を整えた。利下げに踏み切らないとすれば、インフレが目標の2%に向かって一貫して低下しない場合だ
・FOMC声明の中には、雇用市場の状況が変化していることを認める文言の変更が4カ所もあった。これから9月会合までの間に、雇用市場が懸念すべきペースで冷え込む兆しが出てくれば、最初の利下げ幅が0.50ポイントになる可能性もある。実際にそうなる場合には、事前に十分な予告があるだろう

◎キー・ウェルスのラジーブ・シャルマ氏:

・9月利下げへの扉をさらに開いたが、確約するまでには至らなかった
・8月下旬に行われるジャクソンホール会合で、パウエル議長が9月利下げへのシグナルを送ると想定すべきだ。それまでにはあと1カ月分の雇用・インフレ統計も入手できる

◎BOKファイナンシャルのブライアン・ヘンダーソン氏:

・経済の観点から言うと、今年2回の利下げならさほど影響はないだろう。経験則では、利上げまたは今回の場合は利下げの効果が経済に完全に浸透するまでには9カ月-1年半かかる。利下げでリセッション(景気後退)を阻止するのは既に遅過ぎるかもしれないが、現時点で不必要に手をこまねいていればリスクを高める

◎カーソン・グループのライアン・デトリック氏:

・FOMCは予想通り、9月の次回会合で利下げに踏み切るお膳立てをしている。インフレ率は大幅に改善し、ここ数カ月は賃金も元に戻る状況がみられた
・現実にインフレは鈍化しており、FOMCは高金利をこれ以上必要としていない。実際、今後数四半期に渡って景気が減速する可能性があることが非常に懸念され、そのため利下げが必要だ。われわれは年内3回の利下げの公算はかなり大きいと考える

◎ブック・リポートのピーター・ブックバー氏:

・パウエルFRB議長はこの日にゴーサインを出したいのはやまやまだが、同時にまだコミットしなくてもいいことを分かっている。さらなるデータを得る時間がまだあるからだ

◎ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏:

・米金融当局はこの日に利下げすべきだった
・約150ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げが行われるとの見方を表明
・金融当局が利下げを決定する時点では遅過ぎるだろう
・自身は金を選好している
・経済はさほど堅調ではないと見受けられ、米国の赤字問題は悪化が進んでいる

◎Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏:

・この日は単なるプレースホルダーで、市場は9月の利下げを支持する材料をさらに求めていた。FOMC声明からは必ずしも確証は得られなかったが、経済データの弱含みが今後数週間にわたって続けば、当局が方針転換に時間がかかり過ぎたとの観測に論調が移るかもしれない
・過去の経緯からみて株式市場が最も不安定な時期に向かう中で、こうした心理は、株式市場の激しい変動性に拍車をかける恐れがある

(市場関係者のコメントを追加して更新します)

--取材協力:内田良治.

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