(ブルームバーグ):30日の日本市場は長期金利が低下(債券価格は上昇)。日本銀行の利上げ観測が後退しているとの声が出ており、円は下落して株価は下げ渋った。

植田日銀総裁(中央)とパウエル米FRB議長(右)


長期金利は午後3時過ぎ、ほぼ1カ月ぶりに1%を割り込んだ。市場の予想では日銀の利上げは半数に満たず、利上げを意識して上がっていた長期金利がこの見通しに沿って下げた格好だ。金利低下から円は急速に下落し、日本株は下げ幅を縮小した。

日銀が31日に結果を発表する金融政策決定会合では国債買い入れ減額の幅とペース、利上げを同時決定するかが焦点。今回の利上げ予想は半数に満たないものの、10月会合まででは利上げ予想は優勢だ。8月1日未明に判明する米金融政策は金利維持が大勢だが、9月の利下げ予想は多い。日米の政策の方向性が真逆な上、米大統領選など秋口にかけて国内外の政治日程も加わるため、市場の先行き不透明感は強まっている。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは日銀会合について、メディアからの観測報道など新たな情報が提供されていないとして「市場のコンセンサス通りの結果になるとの見方から債券は買いが優勢になった」と述べた。「国債買い入れ減額計画は市場で想定している2年で3兆円程度。あとは9月利上げの予告があるかどうかがポイントで、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げリスクもある」としている。

債券

債券相場は上昇。米国市場では9月から利下げ開始との見方が強く、長期金利が低下した流れを引き継いだ。一方、日銀がこの日から2日間にわたり開く決定会合で利上げを決めることへの警戒感は相場の重しとなった。

午後に入り相場は上昇幅を拡大し、長期金利は0.995%に低下、6月25日以来の1%割れとなった。

三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、特に材料があったわけではないとしながら、ポジション調整の買いが入った可能性があると述べ、値動きからすると利上げ観測が後退した形になっていると指摘した。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、利上げが見送られれば長期金利は低下するだろうが、近い将来の利上げが意識され、下げ幅は限定的となる可能性が高いと語っていた。利上げがあった場合はその後の利上げペースが重要で、年1回の利上げが半年に1回に速まれば長期金利に上昇圧力が加わるとみている。

発国債利回り(午後3時時点)


為替

東京外国為替市場の円相場は午後に入って1ドル=155円台に下落。日銀会合の結果を見極める姿勢から相場はもみ合っていたが、日経平均株価が下げ幅を大きく縮小してきたことで、リスク許容度の改善から低金利の円を売って高金利通貨を買う動きが優勢になった。日銀の利上げ期待の後退で長期金利が低下したことも円売りを促した。

大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは「株価動向を見ながらリスクオンの円売り戻しが出ている」と指摘。イベントを控えて取引が手控えられる中、「市場の流動性が低下しており、値動きが大きくなりやすい」と述べた。

一方、日銀会合については「利上げが見送られても次の会合での利上げが示唆されれば、すぐに円売り再開とはならないだろう」との見方を示した。


株式

東京株式相場は下げ渋り。日米の金融政策決定を前に投資家の買い手控えムードが強く、TOPIXは反落した。日経平均株価は取引終了間際に上昇に転じた。企業決算を手がかりに個別銘柄を売買する動きとなった。

ジェフリーズ証券が今期営業利益予想を下方修正したコマツの株価が下落し、塩野義製薬は第1四半期の営業利益が市場予想を下回ったことで売られた。一方、今期利益予想を上方修正したファナックは高い。

SMBC信託銀行の山口真弘シニアマーケットアナリストは「個別の決算は予想対比で下振れが多いように見える」とし、相場の重しになっているようだと話す。日銀の金融政策決定を控え、投資家は様子見の姿勢とも述べた。

--取材協力:山中英典.

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