(ブルームバーグ): 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と米モルガン・スタンレーの合弁である三菱UFJモルガン・スタンレー証券は7月、円建て債券の引き受け主幹事で初めて5大証券の地位を失う見通しだ。顧客情報の違法共有という法令違反が発覚して以降、案件から除外または選定されない状況が続いている。
ブルームバーグの25日時点の集計によれば、三菱モルガンが7月に関与した国債を除く円債の引き受け業務はわずか4案件で269億円。長らくともに上位5証券を構成してきた野村証券、大和証券、みずほ証券、SMBC日興証券に大きく水をあけられただけでなく、しんきん証券や東海東京証券、岡三証券にも抜かれ、引受額のランキングは8位に沈んでいる。
金融庁によるMUFG傘下証券に対する行政処分とそれに伴う引き受けシェアの低下は、ことしの国内社債発行額が過去最大で推移する中で起きた。リーグテーブルは金融機関にとっての成績表でバンカーのボーナス額にも影響。顧客の信用にもつながることから新規案件を獲得する上で重要な指標だ。
MUFGの亀澤宏規社長は19日、自身の役員報酬を3割、3カ月間減額する処分を発表した。主幹事から外されることなどによる業績への影響は「数十億円」との見通しを示した。
ブルームバーグ・データによると、三菱モルガンは2018年にも日本国債の先物取引での相場操縦で行政処分や国債市場特別参加者の特別資格停止措置を受けたが、ランキングは5位以内にとどまっていた。今回5大証券の地位から外れたことは、銀行・証券間での顧客情報の無断共有という事案の重要性を示唆する。
明治大学商学部で機関投資家とESG(環境・社会・企業統治)を研究する三和裕美子教授は、公的年金を受託している資産運用会社はここ数年、説明責任の観点からも不祥事企業との取引にますます敏感になってきていると話す。
エーザイの社外取締役でもある三和教授は、今回の事案の影響はMUFGだけの問題ではないと指摘。「国内トップの金融機関に情報漏れがあったことは、資本市場にとって非常に大きなインパクトを持つ」とし、「日本が資産運用立国を掲げる中、海外投資家はほかの企業も同じではないかと思い、そうした市場には誰も寄ってこないだろう」と述べた。
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