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女性特有の悩みを抱えながら働く人は多くいます。

「重要な業務の日に生理が来て、思うような仕事ができない」
「生理痛が重くて、会社に行くのが辛い」

そんな「生理」にまつわる悩みを軽減するため「低用量ピル」の購入サポートを制度化した会社があります。制度の導入から1年。実際に、どんな効果が出ているのか取材しました。
(テレビ朝日デジタルニュース部 大見謝華奈子)

■服用した約8割の女性「仕事のパフォーマンスが向上した」

PPIHのダイバーシティ・マネジメント委員会 委員長を務める二宮仁美取締役 この記事の写真は10枚 「すごくモチベーションが高い女性社員がたくさんいるのに、もし月経によって実力を発揮できていないのであれば、それはもったいないことだと思いますね」

そう話すのは、ドン・キホーテなどを運営する、パン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス(以下、PPIH)の二宮仁美取締役です。PPIHは去年3月、45歳以下の女性社員と社員の女性ライフパートナーを対象に、「低用量ピル」の処方や購入を会社としてサポートする制度を導入しました。

PPIHの「低用量ピル」費用補助制度の仕組み

その仕組みはこうです。
まず利用者は一対一のやり取りが可能なSNSで、産婦人科医の診察予約をします。

問診票に回答したのち、オンラインで受診。症状や悩み、体質に合わせて医師が「低用量ピル」を処方します。最短で翌日には自宅に1カ月分が配送され、その後は定期配送となります。

この一連の流れに必要な費用が女性社員は全額補助、社員の女性ライフパートナーは半額が補助されます。制度導入から1年。服用した約8割の女性が、仕事のパフォーマンスが向上したといいます。

■そもそも「低用量ピル」とは?

「ピル」とは、日本では主にプロゲスチンとエストロゲンという女性ホルモンの合剤を意味します。避妊だけではなく、月経をコントロールする目的でも使われる薬です。

服用すると、排卵が抑制され、子宮内膜が薄くなることで、避妊や月経困難症の改善などの効果があることがわかっています。エストロゲンの量によって、「中用量ピル」や「低用量ピル」などと分類されます。

「低用量ピル」は副作用として、頭痛や吐き気、不正出血などの症状が現れる場合があります。中でも重大な副作用は血栓症で、「低用量ピル」服用者は服用していない人よりも発症リスクが少し高くなりますが、実際に発症する人は非常に少ないといわれています。服薬を休む期間などもありますが、基本的に毎日、同じ時間に服用を続ける必要があります。

費用は、「低用量ピル」の種類や、処方する医療機関などによって異なりますが、購入を継続した場合、最低でも1年で2万円台となることが多く、PPIHの制度では、年間で約2〜4万円を補助します。

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■導入後1年で何が変わったのか?

■導入後1年で何が変わったのか?

「低用量ピル」費用補助制度の導入前、PPIHが女性従業員に行ったアンケートでは、約4分の1が「月経痛により仕事を休んだ経験がある」と回答し、うち約3割が、2〜3カ月に一度以上、月経痛で仕事を休むと答えました。

多くの女性従業員が「月経」の影響を感じていることが分かります。

これに対し、制度導入から1年が経った今年3月に公表されたアンケートでは大きな変化が現れました。「普段の勤務時の能力」を10点としたとき、生理中に発揮できている能力の自己評価を聞いたところ、平均点が5.8から7.3に約26%アップしました。

さらに制度利用者の80.6%の人が仕事のパフォーマンスが向上したと回答し、
98.6%が「低用量ピル」の服用継続を望んでいるということです。

また、服薬後の体への効果については、「生理痛が軽くなった」との回答が39.7%と最も多く、次いで「生理不順が改善した」との回答が24.7%となりました。

「簡単に申請ができて、スマホでオンライン診断を受けてすぐに届くのは時間が無い私でも助かる」などの声も上がったということです。

■きっかけは「セミナー」 男性社員の意識が変わる

二宮取締役は、制度導入のきっかけとなったエピソードを話しました。

PPIHのダイバーシティ・マネジメント委員会 委員長を務める二宮仁美取締役 「当社の社長が、社外取締役の産婦人科医の先生と話をする機会があり、その際に先生が『女性の健康というのがすごく大事なんだ』と言って、そこで『ぜひセミナーをやっていただこう』と話が進みました」

セミナーは、まず社長を含めた全役員に受講が義務づけられ、次に管理職が受けた後、役職を問わず、関心のある女性従業員に向けて行われました。受講した男性役員と管理職からは大きな反響がありました。

「『ピル』というと避妊のイメージしか無かったが、実は、生理によってパフォーマンスを下げていることへの改善につながる可能性があるということを初めて知った」

「そもそも男性が気づいていないことが本当に多いと思い、反省しました」

■重要なのは「当事者の声」――集まれば会社は変わる?

PPIHにオンラインピル処方サービスを提供しているmederiも、社内でこうした制度を実施しています。

mederi社員のAさん(20代)は転職でmederiに入社したことをきっかけに、1年半ほど制度を利用し、ピルを服用しています。Aさんは前職で、生理の期間になると、上司からの小さなフィードバックでも悔しさや悲しさでいっぱいになり、人知れずトイレで泣いていたといいます。ほぼ毎月、生理の影響で激しく気分が落ち込んでいたそうです。

転職し、制度を利用し始めたAさんに変化がありました。ほぼ毎月感じていた気分の落ち込みが、全く無くなったのです。仕事のパフォーマンスに生理が影響しなくなり、心身ともに安定した状態で過ごせるようになりました。

mederiの坂梨亜里咲代表は、企業に制度導入に前向きになってもらうためには「当事者の声」が重要だと強調します。

オンラインピル処方サービスmederiの坂梨亜里咲代表 「女性10人ほどの『働きやすさ改革チーム』の声で導入に至った例があります。一人で声を上げると届きづらいかもしれませんが、集まると会社の声となります。色んな声を集め、皆のためになるアクションをすると良いですね」

企業との交渉を担当する大池優貴取締役によりますと、企業のトップの立場から「導入したい」と言われるケースは多くあるものの、背景には、従業員から制度導入を求める声が大きくあるため、導入へ動いているように感じるということです。

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■「大きな病気が隠れている場合も…」個人で対面でも受診を

■「大きな病気が隠れている場合も…」個人で対面でも受診を

「低用量ピル」費用の補助制度を導入する動きがある一方で、大切にすべきこともあります。「生理」や「ピル」に詳しい産婦人科医に聞きました。渋谷区で、働く女性や若者の悩みに耳を傾け続け、オンライン診療も手掛ける「Mieru レディースクリニック」の柴田あずさ院長です。

Mieruレディースクリニック(渋谷区)の柴田あずさ院長

柴田院長は医療機関を受診する大切さを次のように強調しました。

「月経やピルに関する情報を、周りの人や広告などから受動的に得るだけではなく、能動的に集めることも大切です」

「もし月経に関する様々な辛い症状があって、月経困難症だと診断されれば、治療を目的とする保険適用の『超低用量ピル』などで、年間負担額を1万円以下に抑えることも可能です」 Mieruレディースクリニック(渋谷区)の柴田あずさ院長 「月経困難症には2種類あります。原因となる身体的な病気がない機能性月経困難症と、原因となる病気がある器質性月経困難症。例えば『ピルを飲んで月経困難症が治った』と判断し、安心している場合、どちらだったのか分からないままです。どちらも治療薬は同じですが、器質性の場合は画像診断も必要。そのため、オンラインだけではなく、定期的に対面でも受診したほうが良い。他にも、何か大きな病気が隠れている場合もありますから」 この記事の写真を見る(10枚)
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