(ブルームバーグ): 外国為替市場で円相場は対ドルで上昇。政府・日本銀行が介入や市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を行ったとの観測もくすぶる中、市場では神経質な展開が続いた。
朝方に6月の米生産者物価指数(PPI)が発表された後、ニューヨーク時間午前9時ごろからの約10分間に、円はそれまでの1ドル=158円80銭近辺から、157円38銭に上昇した。この動きに関して当局による行動は確認されていない。
この円の急伸を受けて、神田真人財務官は日本時間13日未明、為替介入をしたかどうか「申し上げることはない」と述べるにとどめた。同省内で記者団に語った。またレートチェックについてもコメントしなかった。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略世界責任者、ウィン・シン氏は「きょうの動きは2円未満だった」とし、円買い介入ではなさそうだとの見方を示した。
ブルームバーグの分析によれば、日本の通貨当局は11日の外国為替市場で約3兆5000億円の円買い介入を実施したと推定される。
三菱UFJ信託銀行ニューヨークのセールスおよびトレーディング部門責任者、小野寺孝文氏は、良いタイミングで実施され、一定の効果があったと分析した。
為替介入に関する観測が広がる中、円は週間では主要通貨の中でドルに対する上昇率がトップとなり、銀行間取引市場では活発な取引が行われた。
米国株相場は上昇。最新の経済データを受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月に利下げを実施するとの見方が強まった。
S&P500種は取引終了前の30分間に上げを大きく削った。銀行株は下落。この日はウェルズ・ファーゴやJPモルガン・チェース、シティグループの決算が発表されたが、銀行株の勢い拡大にはつながらなかった。大型テクノロジー銘柄は反発。ただメタ・プラットフォームズは下落した。小型株は続伸。
午前中に発表された7月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は低調だったが、市場では利下げにより最終的に米企業は恩恵を受けるとの見方が強まった。一方、米生産者物価指数(PPI)は6月に予想を若干上回る伸びとなった。ただ米金融当局がインフレ目標とする個人消費支出(PCE)価格指数の算出に使われるカテゴリーは、強弱まちまちだった。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は、「FOMCが9月、世界的な利下げサイクルに加わると引き続きみている。今年の利下げ幅は50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)だろう」と述べた。
エバコアのクリシュナ・グハ氏は、「FOMCの新たな局面」により株式市場の裾野の広がりが持続する可能性があると指摘する。
「失業率のより大きな上昇をきっかけとする反応型の利下げではなく、先制的な利下げにより成長見通しにおけるリスクを軽減できるという新たな局面を迎えつつある」とグハ氏は指摘。「FOMCが経済の軟化を食い止める上で後手に回ってはいないとすれば、この成長見通しにおけるリスク軽減は市場の裾野の広がり、および景気循環セクターにとって望ましいことだ」と述べた。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は、前日に見られた市場のローテーションは裾野を大きく広げたとしつつ、このローテーションを巡る大きな疑問は、それがこの1年半のトレンドの本当の意味での反転なのか、それとも「ヘッドフェイク」なのかということだと指摘。
リポートで同氏は「テクニカル的に見る限り、きのうの動きが持続可能な長期トレンドの始まりだとは確認できない」としつつ、「ただトレーディングの観点からは、短期的にさらなるローテーションが継続し得ると考えられる。チャートが依然として平均回帰の可能性を示しているためだ」と記した。
一方でミラー・タバクのマット・メイリー氏は、「ローテーション」の動きは「裾野の広がり」と同義ではないということを頭に入れておく必要があると指摘。
「これからの『ローテーション』の動きは、過去20カ月間に投資家がテクノロジーセクターに大きく『ローテーション』した時と正反対の動きになると考えられる。2022年の秋以降に市場全体が上方向に引っ張られたように、今回は市場全体が下方向に引きずられるだろう」と述べた。
米国債は上昇(利回り低下)。午後には上げを拡大した。PPI発表後には一時下げる場面もあった。
米国債市場では9月利下げの観測が広がっているが、標準的な25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ではなく、50bpの利下げを織り込み始めている。
この現象はフェデラルファンド(FF)金利先物市場で見られている。11日に発表された米消費者物価指数(CPI)が予想より弱かったことに端を発した10月限の買いは、12日も続いている。10月末に期限を迎える同限月はすでに、9月18日のFOMCで25bpの利下げが決定することを100%の確率として織り込んでいる。
ニューヨーク原油相場は反落。米国での原油需要に増加の兆候が見られる一方、トレーダーらはイスラエルとイスラム組織ハマスとの停戦に向けた進展を注視している。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時1.4%上昇する場面も見られたが、1バレル=83ドルを下回って引けた。バイデン米大統領はソーシャルメディアの「X(旧ツイッター)」に、イスラエルとハマスが停戦の枠組みで合意したと投稿。原油供給が受ける地政学的リスクに低下の可能性が示唆された。原油価格は4月上旬、世界に石油の3分の1を供給する中東で紛争が拡大するリスクが意識され、87ドル近くまで上昇していた。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は11日、イスラエルとハマスの停戦交渉について、「現在はここ数カ月よりも明るい兆しがみられる」と発言。ただ「合意が可能だとしても、まだ先は長い」とし、「間近ではないが、必ずしもはるか先ではない」と説明した。
停戦の可能性を伝えるニュースは、強い需要のシグナルと相反する。10日の米エネルギー情報局(EIA)統計では、独立記念日後の石油製品に強い消費の兆しが示された。一方でWTI先物のプロンプトスプレッド(当限月と来限月の価格差)は昨年10月以来の幅に拡大し、供給のタイト化を示唆している。
PVMオイル・アソシエーツのアナリスト、タマス・バルガ氏は「スプレッドには製油所の需要増加が示されており、この季節、北半球での消費動向を見極める指標となり得る」と述べた。
夏特有の供給リスクも高まっている。カナダのオイルサンド産業の「首都」であるアルバータ州フォートマクマレーの周辺で山火事が発生。すでに一部の生産に影響が出ている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は、前日比41セント(0.5%)下げて1バレル=82.21ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は0.4%安の85.03ドル。
ニューヨーク金相場は前日とほぼ変わらず。米利下げが近づいているとの見方を背景に、1オンス当たり2400ドル台を維持した。
消費者物価指数(CPI)コア指数を含め一連の経済データがインフレ沈静化を示唆し、連邦公開市場委員会(FOMC)に利下げの必要性を納得させるとの見方が広がっている。米国債市場は標準的な25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ではなく、50bpの利下げを織り込み始めている。金利の低下は通常、利息を生まない金投資に有利に働く。
金スポット価格は米生産者物価指数(PPI)を受けた朝方の下げを埋めて、5月に記録した過去最高値の1オンス=2450.07ドルに向けて上昇する場面も見られた。ニューヨーク時間午後2時45分現在は前日比0.1%未満下げて2414.79ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、同1.20ドル(0.1%未満)安の2420.70ドルで引けた。
今年の金相場は高金利や根強いインフレといった向かい風にもかかわらず、年初から17%上昇。中央銀行による積極的な購入や投資需要、地政学的リスク上昇に伴う逃避の買いに支えられた。
原題:Yen Rises as Traders Antsy Over Rate Checks, Likely Intervention(抜粋)
Dollar Suffers Worst Two-Week Run This Year: Inside G-10
Stocks Trim Gains as Big Banks Hit After Earnings: Markets Wrap
Treasuries End Higher on Day, Curve Steepens After PPI Data
Oil Falls as Cease-Fire Progress Outweighs Positive Demand Signs
Gold Holds Near Record as Fed Rate-Cut Optimism Mounts
--取材協力:Garfield Reynolds、David Finnerty.
More stories like this are available on bloomberg.com
©2024 Bloomberg L.P.
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。