(ブルームバーグ): 中国共産党が15-18日に開催する第20期中央委員会第3回総会(3中総会)を巡り、このところ低迷が続いている中国株の行方が注目される。

  3中総会は基本的に5年に1度開催され、経済と政治の大きな変化が発表される会議。マクロ経済の不振と地政学的課題の高まりが重しとなる中で、市場や経済に関する中国政府の方向性について投資家にヒントを与え得る。

  グローバルCIOオフィスのゲーリー・ドゥーガン最高経営責任者(CEO)はリポートで、「市場の方向性を決めるのは、構造的な成長鈍化と不動産セクターの課題に対処する政策が投資家にどれだけ説得力があると受け止められるかだ」との見方を示した。

  中国株式市場にとって、政策主導の株高が頓挫した局面で3中総会が開催される。MSCI中国指数はテクニカルな調整局面入りし、香港に上場している中国本土企業から成るハンセン中国企業株(H株)指数も直近の高値から10%を超える下げとなっている。

  中国本土株の指標CSI300指数は5日、週間ベースで7週連続の下落となり、2012年以来最長の値下がり局面となった。


  歴史が繰り返されるのであれば、3中総会後も中国株の低迷が続く可能性がある。1990年代初頭に中国で株式市場が発足して以来、過去の3中総会から1週間後および1カ月後の上海総合指数のパフォーマンスは、しばしばさえなかった。

  サクソ・キャピタル・マーケッツのマーケットストラテジスト、レドモンド・ウォン氏は、指導部が市場メカニズムを強化し、民間企業を後押しし、安定的で透明性の高い規制を提供する改革を実現できれば「中国株式相場は今後数カ月で大幅に上昇し、アリババやテンセントなどのハイテク大手は、複数の事業拡大や機関投資家の資金流入から恩恵を受けるだろう」と述べた。

  トレーダーやアナリストの注目点は以下の通り。

「新たな質の生産力」

  不動産などの成長エンジンが低迷する中で、共産党の習近平総書記(国家主席)は「新たな質の生産力(新質生産力)」を育む運動を展開し、注目を集めている。このスローガンは、電気自動車(EV)や宇宙飛行、量子テクノロジーなどの分野を対象にしており、関連企業の株価上昇を後押ししている。

  バークレイズのストラテジスト、カーンハリ・シン氏らは、ハイテク製造業で優位に立つためのさらなる努力が、これらのセクターの株価を押し上げるだろうとリポートで指摘。

  しかし、テクノロジーのイノベーションやサプライチェーンの自立を支援する新たな措置がない場合、「同じことの繰り返しとなり、市場にとってはほとんど意味のないイベントとなるだろう」と警告した。

  この結果次第で動く可能性のある銘柄には、人工知能(AI)企業の中際旭創や、ドローンや航空配達、さらには空飛ぶ車などから成るいわゆる「低高度経済」に関連する浙江万豊奥威汽輪などがある。

財政・税制の見直し

  財政と税制を見直す可能性は、情報システム開発を勢いづかせるかもしれない。

  金融・税制情報サービスプロバイダーである税友軟件集団は3中総会を前に株価が急騰。普聯軟件や北京久其軟件などの関連企業も大きく買われた。

 中航証券のアナリストらはリポートで、「財政・税務のデジタル化関連分野には投資機会がある」とし、「企業によるデジタル税務管理の実現は、国税制度改革の最優先課題となっている」と説明した。

国有企業

  中国企業の時価総額全体の約2割を占める国有企業の効率性を高める取り組みを政府が推し進めることへの期待は大きい。そうなれば、国有企業の株主資本利益率(ROE)やバリュエーションが構造的に上昇する可能性がある。

  中泰証券のアナリストは3中総会で予想される結果を踏まえ、「証券会社や大手国有企業が中国株の指標を強力にサポートする可能性がある」とリポートで分析。大手国有企業には中国建設銀行やチャイナモバイル(中国移動)、中国人寿保険など伝統的な銀行・通信・保険業界の企業が含まれる。


電力市場改革

中国の電力株は、電気料金引き上げや投資家の高配当・国有企業選好、そして最近では習総書記による電力市場改革深化の呼びかけにより、好調な動きを見せている。

  シティグループのピエール・ラウ氏らアナリストによると、3中総会で発表される可能性のある改革には、再生可能エネルギーの利用を促進するインセンティブが含まれ、送電網への投資が増える公算が大きい。

  また、価格設定のための市場メカニズムに関する新たな政策が打ち出される可能性もあり、変動コストを最小限に抑えた太陽光や風力エネルギーの利用が促進されるかもしれないという。

  これらの施策は、河南平高電気や許継電気、中国広核電力のような企業に利益をもたらすとの見方をシティはリポートで示している。

原題:A Stock Trader’s Guide to Navigating China’s Third Plenum (抜粋)

--取材協力:Ivy Chok、George Lei.

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