インバウンドの復活を受け、好調のホテル業界。アパホテルを展開するアパグループは、2023年11月期の決算で過去最高の売り上げを記録した。創業から52年連続で黒字を実現する原動力はどこにあるのか。グループCEOの元谷一志氏に話を聞く。
アパホテル快進撃! 52年連続黒字の原動力の秘密に迫る!
2023年2月にオープンしたアパホテル&リゾート大阪梅田駅タワー。34階建てで、客室数は1704室。大阪最大のターミナル駅から徒歩圏内の好立地。そして注目の客室が…
アパホテル 関西地区主席統括支配人 若宮昌志執行役員:
(他社は)ツインルーム同士のコネクトルームが多いが、我々はシングルとシングルを繋げるコネクトルーム。
扉を開けると、洗面所が2つあるツインルームとしても利用でき、特に女性のグループ旅行客に人気。料金は1室5万4000円から。平日は扉を閉めて、ビジネス利用者向けに2つのシングルルームとして使用し、高い稼働率と収益性を確保できるという。
152席あるビュッフェスタイルのレストランは、宿泊客以外の一般利用も可能で、ランチで訪れる客も多いという。ランチ利用客は「リーズナブルでおいしくて、お店もきれい」「毎日来たい」という。イタリアからの宿泊客は「朝食がとてもよかった」「ベッドも大きくて快適だった」と話す。
さらに、還元率の高いポイントシステムも魅力の1つ。普段、出張で宿泊するという男性。
この日は家族旅行で利用。「安く泊まれた。(還元率最大12%の)ゴールド会員も10泊すればなれる」という。
アパグループは現在、海外を含む785のホテルを展開し、客室数は11万7609室で国内1位。2023年11月期の連結決算は、売上高が1912億円、経常利益が553億円と過去最高を記録。創業以来52年連続で黒字を達成。
その経営の舵取りをするのは、2022年4月に創業者の父、元谷外志雄会長からバトンを引き継いだ元谷一志社長兼CEO。
元谷CEOは、外国人の宿泊客に対応した館内設備の整備など新たな取り組みに奔走。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
各国の言語で(問い合わせの)内線がかかってくるので、なるべく内線がかからないように、ぱっと見で理解ができるピクトグラムを規定している。
2024年2月、都内にオープンしたホテルの客室内。よく見ると、カードキーの使い方やシャワーの使い方、それにゴミの捨て方まで言葉が通じなくても案内できるピクトグラムを掲示した。すると外国人客からの問い合わせが減り、従業員の負担が軽減。他にも日本の照明は明るすぎるという声を受け、部屋全体の明るさを調整する操作盤を設置した。
現在アパグループの国内客室は日本一だが、シェアにすると8%。これを20%に拡大するため、積極的な開業計画を進めている。元谷CEOは、広島市内に建設中のホテルを視察。
視察先の鳥取から広島入りすると、すぐさま責任者やデザイナーらと客室の仕様を確認。元谷CEOはこの後、1時間余りで広島をあとにし、福岡・博多へと向かった。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
時代って変わっていくじゃないですか。新しいことに対してうっとうしくなってやらないのは自分が退化すると思う。自分が淘汰されるのではというぐらいの危機感がある。
アパホテル快進撃!元谷一志CEO生出演 コロナ禍から業績アップ・今後の展望は?
――2年前に経営の舵取りを任されて、業績絶好調だとか。
アパグループの売上高は2022年11月期が1382億円とコロナ前を回復。去年は1912億円と過去最高を記録。また経常利益も553億円と過去最高となっている。
――コロナ禍で落ち込んでも赤字にならず、急回復してすごい利益率だ。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
元々不動産からスタートしていることもあるが、1つは所有と運営とブランドという3階建ての利益構造になっていることが大きい。通常だと所有だけとか、運営だけとかブランドだけで運営しているホテルチェーンは利益が高くならないのが実情。
――相乗効果で利益が大きく出ると。利益が上がっているのは旅行者も増えて、客室の稼働率が上がり、単価も上がってるから?
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
2023年5月8日から指定感染症が2類から5類に変わって一気に訪日外国人旅行者が来たことと、34年ぶりの円安水準ということも、非常に大きい。訪日外国人旅行者の割合がこの22年度が25.3%、23年度が30.3%。5%伸長しているのは、その分、高単価の客が来ている。(客の3割が外国人か)はい、そうです。
――ホテルの部屋の稼働率はどうか?
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
全国平均で85%くらい。ただ稼働率ばかり注目されやすいが、ホテルは稼働率×単価なので、RevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益を表す値)という指標を大事に見ている。
――単価もかなり上がっている?
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
訪日外国人旅行者が伸長していることが価格を引き上げていることが大きい。逆に、日本人客がどんどん少なくなってきていることは否めない。大体今83万人ぐらい出生者数と死亡者総数の差があるから国内の需要が、観光もビジネスも少しずつ微減しているのが実情だ。
――アパホテルは「ダイナミックプライシング」といって需給に合わせて価格をかなり大胆に変動している。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
支配人がラックレートといわれる定価から1.8倍の範疇で差配して決めている。2023年の予約のブッキングラインよりも当然上回っていけば単価は高くても客は来る。逆にブッキングラインから下回っていれば単価を安くせざるを得ない。
――今は好循環が起きていて、稼働率、単価は上がる、すると利益率は急速に高まる。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
その分当然、販管費も上がってくるので、清掃など人件費も当然つられて上がってきているが、比較的良い循環ができていると思っている。
アパホテルのホテルの数を見ると、2024年は4月時点でホテル数が785、客室数は11万7609室と、2015年の約3倍に拡大していてどちらも国内最大となっている。
――全国の旅館・ホテルの部屋のうち8%。それを20%までに持っていきたいと。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
人口減社会で訪日外国人旅行者がいずれマスになる時代が来る。今(外国人客は)3割だが4割、5割になったときに、今の客室は日本人向けに作っているものがほとんど。今1ホテル1イノベーションという形で、特に訪日客が多い新宿、渋谷、赤坂、上野、難波、京都といったところは訪日客が泊まった時に不便なことはないかという観点からピクトグラムだとか机や椅子の高さを日本人の体格よりも高く5センチ上げようとか、細かいことでほとんど気づくか気づかないかの、イノベーションを起こしている。ちなみに2024年の12月には「アパホテル&リゾート 大阪なんば駅前タワー」が2055室でオープンする。
――次々と大規模ホテルをオープン。採算が取れるという自信があるのか。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
アパホテルの今のポイントカードの会員数が2200万人を超えている。ダウンロードアプリが500万ダウンロードを超えている。これは2位のホテルチェーンが10万ダウンロードもないことを考えるとダントツに違う。
――コロナの時には、弱気にならなかったのか?
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
コレラやペスト、スペイン風邪といった感染症は100年に一度大きなパンデミックとして世界各地に猛威を振るう。今回のコロナ禍でも、約100年ぶりにパンデミックというものが起きたと。おそらくだが宿泊施設というのは病院ではなかなか受けられない軽症者の受け入れをしてきたと。有事にホスピタル、平時にホテルというハイブリッドな経営をしようということで全く問題なく、計画通り進めていった。
――まだまだ強気で、ホテル需要は強く、拡大路線を続けていこうと。
アパグループ 元谷一志社長兼CEO:
例えばビール業界は4社で99%ほぼ占めている。ホテル業界トップでも8%と考えるとまだまだ寡占化はこれから進むと思う。(アパは)世界で19番目の客室数を持つホテルチェーン。世界規模で考えるとトップチェーンのマリオットは100万室規模で動いているので日本発のホテル産業としては、私どもが踏ん張らないといけないと思っている。(2代目としては)覚悟を決めることが大事。創業家に生まれたのは自分が決めるものではなく本当にたまたま生まれてきた。まさしく「宿(やど)が命(いのち)」で「宿命」。覚悟を決められるかというものが幼少期に培われ、サラリーマン社長と違って「徒弟制度」に基づいて厳しい育てられ方をしたのが大きい。さらに大きく伸ばしていけるかというのは、私の器次第かもしれない。
(BS-TBS『Bizスクエア』 4月13日放送より)
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