■「自分の力で」進化いた“車いす”
車いすで生活する人の “次世代モビリティ”は茨城県・つくば市で誕生しました。
手掛けるのが筑波大発のベンチャー「Qolo」。案内してくれたのが開発責任者の江口さんです。
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「こちらがその機械です」
大きさや見た目も、一般的な電動車いすに見えます。一体、どんな進化を遂げているのでしょうか。膝を押さえる部品を外し、足を持ち上げながら乗車します。
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「この膝を押さえる部品をつけていきます」
シートベルトを装着し、これで準備完了。そして、肘かけから出てきたのが…。
ABCテレビ 増田紗織アナウンサー
「おぉ!手すりが出てきました」
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「ここから前に倒すと…こういう風に、立ち上がります。この状態で動けるようになっています」
「Qoloモビリティモデル」は“老化により筋力の衰えた人”や“けがや病気などで下半身にまひがある人”でも電力の補助なしで“自分の力”を使って立ち上がることができるといいます。
それを可能にしたのが、この“ガススプリング”です。
座っているときは、圧縮状態でロックがかかった状態。肘かけを操作し、立ち上がるときに身体を前にずらすと、ロックが解除されガススプリングが伸びる力を使い立ち上がります。座面は姿勢の変化に合わせ連動、重心のバランスを取りながら立ち上がることができます。
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「(Q.こうやって向き合っていると(車いすが)前に倒れてこないのかなって)ちょっと前に倒れますね。例えばこういう風になったとしても、自分の体重と機械のこの重さのバランスで倒れないでいることができる」
■車いす“立つ姿勢”で「新たな生活」
座面に体重をかければガススプリングが縮まり体重を支えながら変形。立ち上がって移動するだけでなく、状況に応じて一般的な電動車いすと同じ様に移動が可能です。
ホイールにはロボット開発や医療などの現場で活躍する“オムニホイール”を採用。前後左右、旋回も可能な為、狭い場所でも小回りがききます。
例えば棚の荷物を取ってデスクに戻るといった動きもできます。
江口さんの研究が大きな注目を集めたのが9年前。開発者の卵を支援する国際コンテストでした。
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「(Q.開発のきっかけは)祖母が転んで歩けなくなったんですね。杖を使ったり。そのうち車いすになって」
祖母の姿をみて日常の暮らしを“肉体的”にも“精神的”にも支えられる、そんな車いすを届けたいと研究を続けてきました。開発には様々なハードルがありました。例えば、身長や体重は人によって差があり、障がいの度合いや力も異なるためコンピューター上では200万通り以上のシミュレーションを重ねたといいます。
立つことに慣れていない車いす利用者の負担を考え、座ったままでも移動できるよう設計も見直しました。
約30人の車いす利用者の協力により改良を重ねた結果、様々な体格の人が利用できる車いすが誕生したのです。
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「(Q.身長や体重に制限は?)145センチ〜190センチの範囲。体重で40キロから100キロまでの範囲で対応」
開発初期の段階から関わってきた木戸さん。
29歳の時に事故で脊髄を損傷し担当医の紹介で「Qolo」の開発プロジェクトに参加しました。
Qolo テストパイロット 木戸俊介さん
「Qoloで立ったり 座ったりっていう選択肢ができることによって、自分自身がその成功体験っていうか、自立できたっていう感覚っていうのが手応えとしてある」
その手応えを感じたのが2019年につくば市で行われたG20です。
特設ブースに視察にやってきたのが、当時、外務大臣だった河野デジタル大臣です。
Qolo テストパイロット 木戸俊介さん
「河野さんがその時に『乗ってみたい』って言ったので車いすに乗り換えて『どうぞQolo乗ってください』。河野さんは『えっ!あなた車いすだったんですか』っていう風に言われたことがあって、僕自身が“当たり前のように立っている人”として認識されたことがどれだけ嬉しいか、障がい者として認識されてないっていうぐらい当たり前に自分として生きられる結構尊いと思っていて。立ったままプレゼンテーションとか講義をして障がい者って一言も言わずにプレゼンテーションをしたいっていうのも思っていて。めちゃめちゃその夢が叶いそう」
■立った姿勢で移動「したい」を「できる」に
これは車いす利用者に取材を行いやってみたいことを本人が再現したイメージ映像です。愛車の洗車を自分でやりたい。スーパーで自由に商品を選びたい。パートナーや友人らと、同じ目線の高さで会話がしたい。さまざまな「やりたいこと」が描かれています。
Qoloモビリティモデルはまだ試作段階ですが、現在、医療機関や施設などで試験導入されているモデルもあります。
それがこの「Qoloリハビリテーションモデル」。乗って移動することはできませんがモビリティタイプの立つ仕組みや技術を活かしリハビリの現場で活躍。
脊髄損傷者専門トレーニングジムでは70人が利用していると言います。
J-Workout 認定トレーナー 吉田瑠菜さん
「私たちがサポートして立っているということではなく、一人で立ち上がることができる」
高柳さんは事故で脊髄を損傷。およそ7年ほど前からこのジムでトレーニングを続けています。
高柳純一さん
「昔の健常であった状態に近い。体の使い方かなど。どうしても恐怖感、体幹がないので前に倒れてしまう状態。普段足の位置を超えて前にだすということをしない。かなり安定している機械なので(体ごと)前に倒れない」
モビリティモデルが実用化されたら何をやってみたいか聞いてみると…。
高柳純一さん
「まず台所に立ってみたいですかね。今だと全然届かないので、いろんなことができますね」
メディカルアドバイザーとしてQoloの開発に関わる清水さんは。
筑波大学 医学医療系リハビリテーション医学准教授 清水如代さん
「寝たきりが続いてしまうと自律神経にも影響が起きますので、血圧が下がってしまって、いわゆる立ちくらみみたいなことも起こりやすい。早い時期から立つことを経験していればそういったことも起こりにくい。モビリティバージョンを今度、生活で使ってもらって生活の中でも立ち座りの訓練をしてもらう」
車いすで生活する人の“次世代モビリティ”。実用化はすぐそこまで来ているといいます。
■「できる」増える次世代“車いす”実用化は?
Qolo 代表取締役 江口洋丞さん
「2026年の春頃の市場投入を予定」
「(Q.今後どのように展開していきたいか)自分の好きだったこと、自分の得意なこと、それを自分の力で生きていく力に変えられるように展開していけるといいなと思っています」
(2024年6月30日 「サンデーLIVE!!」)
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