(ブルームバーグ): 27日の日本市場では、円相場がドルに対し38年ぶりの安値圏で推移。日本の通貨当局者から円安けん制発言が相次いだものの、絶対的な日米金利差を背景にした円売り圧力が強く、160円台での取引が続いた。

債券相場は円安で日本銀行が早期の追加利上げを迫られるとの見方が広がり、長期金利は1カ月ぶりの高水準を付けた。為替介入への警戒感に加え、米半導体メモリーメーカーのマイクロン・テクノロジーの業績見通しが嫌気された株式相場は4営業日ぶりに反落した。

神田真人財務官は26日夜、足元の円安進行について「最近の為替の動きは一方向」だとし、「行き過ぎた動きに対しては必要な対応を取る」と発言。鈴木俊一財務相も27日、「高い緊張感を持ってこの動きの背景も分析して、必要に応じて必要な対応を取る」と再度の介入も辞さない姿勢を示した。

大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、為替介入の可能性について「準備はできているはずで、あとはタイミングの問題」と話した半面、「市場が身構えている時はやらないかもしれない」と語った。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は、対ドルで160円台前半に上昇。約38年ぶりの水準まで円安が進み、日本の通貨当局者がけん制発言を繰り返す中、円買い介入の可能性が警戒されている。一方、高水準の日米金利差を背景とした円売り・ドル買いの需要も根強い。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは「きのうは特段の材料がない中で円安が進んでおり、投機的な動きが出ている」と指摘。為替介入への警戒感も高まる中、「急ピッチで円安が進んだため、さすがに円売りも一服している」とみていた。

円相場は26日の欧州時間に160円台に突入し、4月29日に付けた約34年ぶりの安値160円17銭を下抜けた。神田財務官の発言を受け160円02銭まで一時下げ渋ったが、その後一気に160円87銭と86年以来の安値を付けた。大和証の石月氏によると、「神田氏の発言も財務官交代が市場コンセンサスになる中で響かなくなっている」という。

債券

27日の債券相場は下落。長期金利は1カ月ぶりの水準に上昇した。米国市場で長期金利が上昇した上、為替市場での円安加速で日銀が早期の追加利上げに踏み切ることへの警戒感が高まっている。この日行われた2年債入札は、金利の上昇もあって無難に消化された。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、2年債入札は無難ないしやや順調だったと分析。7月の日銀金融政策決定会合での利上げ観測が高まる中で懸念もあったが、結果的には需要がしっかりしており、午前中の金利上昇も追い風になったと見ていた。

ただ、入札結果の相場全体への影響は限定的だった。大塚氏は「長期金利は5月30日に付けた1.1%が投資家の目線として意識されているが、そこで確実に押し目買いが入るかどうかは分からない」と語った。

株式

東京株式相場は4営業日ぶりに反落し、日経平均は一時400円以上安くなった。円相場が対ドルで再び160円台まで円安が進み、為替介入への警戒感や米マイクロンの業績見通しが嫌気され、半導体関連を含む精密機器株やゴム製品株など輸出セクターの一角が安い。医薬品や食料品株も下落。一方、金利上昇を材料に銀行や保険など金融株は堅調だった。

売買代金上位では、中国での半導体前工程製造装置向け投資の減退懸念からみずほ証券が投資判断を引き下げたSCREENホールディングスのほか、東京エレクトロンやキーエンスが安い。肺がん治療薬を現状では承認できないとの審査完了通知を米食品医薬品局(FDA)から受けた第一三共も下落。

三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、介入への警戒が高まっているため、為替が急速に円高に向かうリスクがあり、ボラティリティーを考えると「輸出関連銘柄を買うのは難しい」と言及。米マイクロン株や米国株先物の時間外での下落も影響したと話していた。

--取材協力:長谷川敏郎.

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