(ブルームバーグ): 武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長は、米国が経済安全保障の観点から中国企業への規制を強める中でも、同国のバイオテクノロジー企業からの医薬品のライセンス取得に引き続き取り組む姿勢を示した。
ウェバー氏は24日のインタビューで、地政学リスクに注意を払いつつも、「中国のバイオテック企業とのパートナーシップの可能性に対してオープンで居続けるべきだ」と述べた。武田薬のパートナーの多くは米国企業だが、近年中国は「技術革新の源泉となる国」になりつつあり、関心を持っているという。
先端半導体分野を中心に起きていた米中対立は医薬品分野にも広がり始めている。米上下両院の超党派議員らは1月、一部の中国企業が政府との契約にアクセスできないようにするため、バイオセキュア法を提出した。
同法が成立した場合、中国企業から薬の材料を調達している医薬品企業などに影響を与える可能性が指摘されている。ただ武田薬は中国国外向けの医薬品製造で中国企業に頼っておらず、「大きな影響はない」と説明した。また地政学的緊張が製薬業界に及ぶことは、患者の不利益につながるとの懸念を示した。
ウェバー氏は、ライセンス取得の増収効果に期待する。中国のハチメッドから中国以外での開発・商業化のライセンスを取得したがんの治療薬は米国食品医薬品局に加え、欧州委員会から承認を得た。中国や台湾、ロシア以外の地域における白血病治療薬候補の開発・商業化の権利の取得に向け、アセンテージファーマと契約を結んだ。この白血病治療薬候補の発売には3年程度かかると想定しているという。
6つの後期開発薬
業績については、来期(2026年3月期)には「再び成長軌道に戻ると計画している」と強調。多動性障害治療剤「ビバンセ」の特許切れなどが響き、24年3月期のコア営業利益は前の期比11%減だったが、影響は今期までだとする。
ナルコレプシータイプ1(NT1)の患者を対象とするTAK-861や、乾癬(かんせん)などの自己免疫疾患の治療に使うTAK-279など後期開発段階にある6つの医薬品候補の実用化を進め、収益拡大につなげたい考えだ。
コスト削減も進める。例えば米マサチューセッツ州内の拠点で約500人の人員削減が明らかになっているが、利益率改善に向けた取り組みは組織変革や調達コスト削減、人工知能(AI)を使った業務効率化など複合的なもので、「ワンショット」ではなく、数年をかけて進めていくとした。
かねて25年ごろに退任するとの意向を示していたウェバー氏だが、それはもう念頭にないと話した。後継者選定は取締役会にとって大きな焦点となる議題ではあるが、明確に決まったものはなく、バトンタッチの時期も未定だとした。
--取材協力:Isabel Reynolds.
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