トヨタ・マツダ・ホンダなど日本が世界に誇る自動車のトップメーカーに問題が相次いで発覚しました。一体どうしてこのような問題が起こったのか?そして国土交通省の認証試験というのは一体どういうものなのか?メーカーだけが本当に悪いのか、他にも何か問題があるのか?自動車評論家・国沢光宏さんに解説していただきました。
◎国沢光宏:自動車評論家 日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員も務める、自動車雑誌などで多数執筆
トヨタなど自動車メーカー5社で500万台以上の認証不正
ーーー今回不正が発覚した対象車は5社500万台以上。一方で各社は口を揃えて『国より厳しい基準で独自に試験をしているので安全性に問題はない』と主張しています。この安全性についてはいかがでしょうか?
(国沢光宏さん)やはりユーザーの方はそこが一番心配だと思うんですね。不正とか改ざんとかいうふうに言われると、自分の車は大丈夫なのかとなると思います。今回発表されたデータを見ると、精査してみたんですけど、いずれも安全性には影響ないなというふうに判断できるような内容でした。
国の基準より厳しい基準で試験をするワケ
ーーーどんな試験だったのか、会見でトヨタが発表した一例で「後ろからの衝突実験」では、国が定める規定では1100kgのものがぶつかった場合に車体が耐えられるのかを調べます。しかしトヨタは1800kgで試験を行ってクリアをしたということなんですね。より厳しい基準でクリアしているのに不正とされたということです。これはどのように見ている?
(国沢光宏さん)これは追突の燃料漏れを試験する内容です。日本で走っている車は小さいので1100kgでやるんですけど、アメリカとかは大きな車が多いので重い車でやるんですね。重い車で燃料が漏れなければいいということで。トヨタはアメリカにも車を売っているので1800kgでやったと。これで問題なかったので、本当は1100kgとかやんなきゃいけないんですけど、時間がないとか、認証ってすごく時間がかかるので締め切りがあるので、とりあえず1800kgのデータを出してしまったと。これが不正・改ざんということになります。
ーーー1800kgでクリアしているのであれば、1100kgも普通に考えるとクリアするのではないかと感じるが、それは違う?
(国沢光宏さん)国交省は自分が言ったことを守らないとダメというのが全部の基準です。実は現場ではもう少し柔軟な対応がなされていて、例えば衝突試験するときに、右側をぶつけるのが左側をぶつけるのかどっちでもいいですよみたいな。同じなので左右。そういうこともちゃんと現場単位では行われるんですけど。例えばスピード違反は1km/h違反でもダメだと言われたら、もう厳密にやらないとダメだということなんですね。国交省が決めた手順をもってしないと絶対ダメということを今回言われているということですね。厳しい基準というのは世界基準が多いんですね。日本の車って世界でも売っているので、世界基準をクリアできるようになっているんです。それで世界基準のテストデータを出すと、これも不正・違反・改ざんということになってしまいます。なのでしっかり基本的にはやるんですけど、トヨタは20万ぐらいのテストデータがあって、その中で今回調べたら6件です。しかも10年ぐらい前のデータなので、今はちゃんとできていると思うんですけど、たまたまこういうことがあったということだと思うんですね。
「型式指定」の認証試験とは?
ーーー今回不正がわかったのが「型式指定」と呼ばれるものです。メーカー側が認証試験を行って、細かいたくさんの試験データを国に提出して、審査に合格すると「型式指定」を取得することができます。同じ型式の車であれば車1台ずつの審査が不要になります。これをもって大量生産することができるということです。この「型式指定」評価制度についてはどのように感じている?
(国沢光宏さん)これは世界的に行われています。飛行機でもどんなものでも安全を保つものは必要なので、これは全く問題ないし、やるべきだというふうに思います。
ーーー昔からこういう制度が使われている?
(国沢光宏さん)そうです。大雑把な枠組みはもう70年ぐらい前にできたもので、中身の基準は変わっているんですけど、やり方そのものは変わっていないということですね。
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