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国土交通省は、トヨタ自動車を含む大手メーカー5社が性能試験で不正を行っていたと発表しました。これまでに事故などの情報はないということですが、自動車業界を揺るがす事態に、各社のトップは厳しい反省と謝罪の言葉を述べました。ただ、メーカーにはメーカーの言い分もあるようで、試験をめぐる国交省との認識の違いも浮き彫りになっています。

■「安全性テスト」虚偽データ提出

トヨタ自働車は3日午後5時から会見を開きました。

トヨタ自動車 豊田章男会長
「認証試験で基準を達成して初めて車を量産・販売することが可能になるが、今回の問題は正しい認証プロセスを踏まずに量産・販売してしまった点」

トヨタでは、現在も販売されている3車種について、歩行者・乗員保護試験でデータ不備があることなどを認めました。試験では、どの程度けがを軽減できるのかなどを測ります。

トヨタカスタマーファースト推進本部 宮本眞志本部長
「認証で申請した測定部位と、実際にぶつけた位置が左右逆のデータ。片側のデータを両側分のデータとして認証申請に使用してしまった」

また、衝突する角度をより厳しくした、開発中のデータを申請に使用するなどしていたということです。

さらに、国交省によると、トヨタとマツダでは、過去に生産していた車で衝突試験における不正が確認されたということです。トヨタでは生産終了した4車種について、マツダでは生産終了した3車種について、衝突試験などの試験方法に不正があったということです。トヨタは、エアバッグが開く方法で不正があったと報告しました。

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■エアバッグ“タイマー式”で試験

■エアバッグ“タイマー式”で試験

マツダでも、同様の不正があったことを認めました。

マツダ 小島岳二専務
「不正事案の内容は、エアバッグを自然起爆ではなく、外部装置を用いて時間指定起爆をした試験を実施し、それを申請データとして使用した」

本来なら衝突で作動するエアバッグをタイマーで作動させていました。これは、去年発覚したトヨタのグループ会社、ダイハツ工業でも行われていました。ダイハツや豊田自動織機など、グループで相次いだ認証試験の不正について、豊田会長はこう発言していました。

トヨタ自動車豊田章男会長
「いろいろ不正を起こした会社はやっちゃいけないことをやったわけで、それに対しては会社を作り直すくらいの覚悟でやらざるを得ない」

しかし今回、遡って調査すると、トヨタ自身も不正を行っていたことが明らかになりました。

トヨタ自動車 豊田章男会長
「今回の事案は、トヨタ自動車とトヨタ自動車東日本の2社にまたがる問題です。日野、ダイハツ、豊田自動織機に続き、グループ内で問題が発生していることに対し、トヨタグループの責任者として、お客様、車ファン、全てのステークホルダーの皆様に心よりおわび申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」

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■3社の現行車種“出荷停止”

■3社の現行車種“出荷停止”

また、マツダでは、現在販売されている2車種について、エンジン制御ソフトの書き換えがあったということです。

マツダ 小島岳二専務
「不正事案の該当車両は5車種で約15万台。全て国内市場向け」

マツダ 毛籠勝弘社長
「今回の事案に関しては、昨年発生した他社の事案、こういったものを参考に、現場のエンジニアのなかから類似ケースがあるという声が上がってきた」

ただ、トヨタとマツダは、安全性について問題ないとしています。

トヨタ自動車 豊田章男会長
「まだ(調査は)継続中ではあるが、数万に及ぶ調査の結果、6つの事案が明らかになった。いずれにしても法規に定められた基準はクリアしているので、お客様に安全にお使いいただけることを確認している。しかしながら、こうした行為は認証制度の根底を揺るがすもので、自動車メーカーとして絶対にやってはいけないことだと考えている」

マツダ 毛籠勝弘社長
「社内の技術検証、および再試験を行い、乗員保護性能については法規が定めた基準を満たす性能を有していることを確認している。したがって、対象車両をお使いのお客様においては引き続き、お乗りいただいて安全性の問題はありません。全社で再発防止の取り組みを徹底し、皆様の信頼回復に向けて努力していきます。この度は大変申し訳ございませんでした」

今回は、国交省がダイハツ工業などの事案を踏まえ、型式指定している自動車メーカーなど85社に対して調査を指示したところ、報告が上がってきました。国交省は、現行生産車で不正行為の報告があったトヨタ、マツダ、ヤマハ発動機に対して出荷停止を指示しました。そのほか、生産が終了した車種について、ヤマハでは警音器試験、ホンダでは騒音試験、スズキでは制動装置試験において不正が報告されています。

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■利用者や販売店 不安広がる

■利用者や販売店 不安広がる

ユーザーは…。

トヨタ車ユーザー
「びっくりしたのが一番。色んな企業が悪いことをしているので、どこを信用したらいいかという気分。世界的企業ですから、きちっとしていただきたい」

マツダ車ユーザー
「大丈夫だと思って乗っているので。残念だが(不正が)ないものだと思って、信頼して選びたい」

トヨタ車を扱う中古車販売店も、今後の対応について不安を抱えています。特に、不正があったという車種は人気が高いといいます。

『オートプラザ・ストリーム』泉谷叡店長
「ヤリス クロスは本当に人気で販売実績がある車なので、売り上げにかなり影響してくるのではと。トヨタは日本国内では一番大きな自動車メーカーなので、国内の自動車イメージ低下につながってしまうのではないか」

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■「認証プロセスに配慮が不足」

■「認証プロセスに配慮が不足」

不正が起きた原因について、トヨタは…。

トヨタカスタマーファースト推進本部 宮本眞志本部長
「認証のプロセスを踏むという観点の配慮が足りなかったんじゃないか。背景には忙しさとか色々な面もあるので、今調査中。その辺の課題をもう少し1件1件深掘りしながら、対策を1個1個打っていきたいと思う」

今後については…。

トヨタ自動車 豊田章男会長
「当局とも、今後どういうことができるか議論のきっかけになればいい。今回の事案で色々学んだことを日本自動車工業会などを通じて、今後国の方にも関わりながら、皆さんが安心安全に乗れる交通流を作るきっかけにぜひともさせていただきたいと思う」

国交省は、不正行為の報告があった5社に立入検査を行い、事実関係などの確認を行うことにしています。

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■計38車種に『型式指定』不正

■計38車種に『型式指定』不正

今回、5社の不正が発覚したのが『型式指定申請』。型式指定とは、自動車やエンジンの大量生産に必要なもので、メーカーが国の保安基準を満たしていれば“量産しても良い”という認証制度です。

本来は、販売の際に車1台ずつ安全基準などを満たしているか確認する必要がありますが、事前に提示したサンプルと同じように作れば、そうした確認が不要になる制度です。

改めて今回発覚した“不正行為”について見ていきます。

トヨタは、現在生産中の3車種、『ヤリス クロス』『カローラ アクシオ』『カローラ フィールダー』で、歩行者保護試験における虚偽データ提出などの不正が発覚しました。そのほか、過去の4車種でも不正が発覚しました。

マツダは、現在生産中の2車種、『MAZDA2』『ロードスターRF』で、出力試験におけるエンジン制御ソフトの書換えが行われていました。そのほか、過去の3車種でも不正が発覚しました。

スズキは、すでに生産が終わっている1車種、『アルト(貨物仕様)』で、制動装置試験の虚偽記載。ブレーキの停止距離に関して、実際よりも短く記載していたということです。

ヤマハは、現在生産中のバイク1車種『YZF−R1』。

ホンダは、『FIT』『ODYSSEY』など、すでに生産が終了している22車種で、騒音試験などでの不正が行われていました。

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■一部で国交省と“温度差”も…

■一部で国交省と“温度差”も…

トヨタ・マツダ・ホンダが会見を行いましたが、一部の試験において、国交省との認識の違いがあらわになるような場面もありました。

例えばトヨタの会見では、後面衝突による燃料漏れ等の確認試験で「法規基準の1100キロより重たい1800キロの評価を使用し、より大きな衝撃で評価」。また、衝突時に乗員を守る試験のなかでは「認証試験の基準よりも厳しい条件を作り出すために(エアバックの展開に)タイマー着火を用いた」としています。さらに、歩行者との衝突の危険度を確認する試験では「本来ならば法規で定められた衝撃角度50度で行うところ、より厳しい65度のデータで申請した」としています。

トヨタ自動車 豊田章男会長
「当局とも、今後どういう事ができるのかという議論のきっかけになればいいと思っています」

(Q.「本来なら法令に則った試験を行うべきだった」と反省の言葉を述べていますが、「より厳しい条件を設けていた部分もある」と合わせて言っています。どう理解すればいいですか)

自動車評論家 国沢光宏さん
「ブレーキやエンジン出力の人為的な調整など、そもそもアウトな不正もあった。ただ、自動車メーカーは今は言えないと思うが『世界で競うため、国に認証制度を見直してほしい』というのがメーカー側の総意ではないか。日本は認証に長ければ1年ほどかかり、海外との競争には不利。電気自動車や自動運転が普及すれば、認証はさらに複雑になる」

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