森林を整備する目的で導入された『森林環境税』。今月から年間1人あたり1000円が徴収されます。はたして“有効活用”となるのでしょうか。
■今月から1人年額1000円徴取
北アルプスのふもと日本有数の山岳地帯、長野県大町市では、面積の9割を森林が占めています。市の担当者に案内してもらうと、木々を育てるための間伐が始まっていました。
大町市農林水産課 丸山秀和係長
「木の間をあける。下の小さな木が生えやすくなるように光が当たるようにしてある。民間の方の10年以上、手の入っていない森林について譲与税を使って森林整備をやっている」
国土の7割を占める森林を守るため、国が各自治体に交付している『森林環境譲与税』。世界の温暖化対策を決めるパリ協定をきっかけに2019年度から始まった取り組みで、毎年、数百億円の予算が投入されてきました。
そして、今月からは新たに、財源として『森林環境税』を1人あたり年間1000円を徴収します。
大町市農林水産課 丸山秀和係長
「ありがたい。今までできなかったことができるようになるのと、森林整備が進むことになる」
ただ、問題となっているのが“配分の仕方”です。集めた税金を国が各自治体に配分しますが、その配分の基準は森林面積や林業就業者数のほか、人口という要素も含まれているため、どうしても都市部で増える傾向があり、ため込む自治体もあります。
■『森林環境税』を何に使えば…
東京・北区にある浮間中学校の体育館。壁のほとんどに木が使われています。
北区生活環境部 銭場多喜夫部長
「まさに木が感じられるのかなと。こちらの部分は通気にもいい。環境面でも効果がある」
都内でも木を活用する取り組みが始まっています。中野東図書館の中にたたずむ木の家。中野区が3年前に交付された『森林環境譲与税』を使って作りました。他にも小学校に木の机を購入するなどしましたが、2000万を超える予算が使われず、積み立てに回っています。
中野区環境課
「今年度は新庁舎を建てたので予算を使ったが、来年度以降は何に使ったらよいのか、使い道に頭を悩ませている」
東京23区には、いわば“守る森林”はありませんが、人口が多い分、地方に比べて予算は多く配分されます。
東京A区担当者
「森林がないから、森林環境税を丸々年度内に消化するのは難しい」
税制と林業に詳しい専門家は、こう話します。
東京経済大学 佐藤一光教授
「国が一律でこれをやりなさいというより、それぞれの自治体で事情に合わせた使い方をして下さいというのは、地方分権の立場からすれば望ましい。森林を大切にしていく方向性自体は間違っていない。ただし、木のベンチを作るとか、森林の環境教育やセミナーなどで、本当に“脱炭素”の政策として10年後に向けてしっかりとした下準備になっているのかは疑問。ポイントは植林につながっているか。これが“脱炭素”。とにかく使いさえすればいい、それじゃダメ」
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