今年10月にデビュー予定の近鉄の新型車両。“夜の大移動”を鉄道ファンらが見守りました。

 5月31日午前2時前、平日の深夜にもかかわらず東大阪市にある工場の前には多くの人が集まっていました。彼らが待ちわびていたのは、近鉄が今年10月に運行を開始する新型車両です。

 (記者リポート)「午前2時をまわりました。今、近鉄の新型通勤車両が工場から出てきました」

 (見学者)「新鮮ですね、見た目が。今までにないような色しているんで」
 (見学者)「いいっすねー。なんか新鮮というか、また新しい風が入ってきた」

 「一般車両」のリニューアルは約四半世紀ぶり。近鉄にとってまさに一大プロジェクトです。

 今年1月、工場では新型車両のパーツを組み上げる作業が始まっていました。通勤などで使われる一般車両の刷新といういわば“近鉄のリブランド”を託されたのが車両設計一筋の喜多陽平さん(36)です。

 (近鉄・技術管理部 喜多陽平さん)「(設計の)紙から始まったのが、台枠ができて、これから六面体になると思うと、いよいよですね」

 この日は完成の出来を左右する車両の顔=正面部分の作業の立ち合いです。こだわったのは、デザイン性。“新しい近鉄”を印象付ける未来の鉄道をイメージしました。こだわりはそれだけではありません。車内も快適性はもちろん、子連れの利用者や旅行者などにも“やさしい”設計にしたといいます。

 そのこだわりのひとつが、座席です。すっぽり体が収まる形のグリーンの座席。1両に2か所設けられていて、横にはベビーカーや大きなスーツケースを置けるようにしました。そのほかの座席も、混雑状況に応じて前向きと横向きを切り替えることができるということです。

 そして5月、外観塗装の日には、近鉄カラーの塗料が吹きかけられていきます。ベースはこの色ですが、できあがりはツートンカラーとなるため、カバーしていたシートをとって完成させていきます。近鉄らしさを受け継ぎながら、新しい息吹も感じる車両。プロジェクトの投資額は約84億円。第一弾で40両が製造される計画です。

 5月30日午後11時すぎ、新型車両はトレーラーに乗せられていました。工場での作業を終え、近鉄の車庫へと運ばれるのです。

 (近鉄・技術管理部 喜多陽平さん)「やらなければいけない整備とかも残っていますので、それをきちんと仕上げてきちんとした電車になるようにしていきたいと思います」

 24年ぶりの新型車両。いち早くその姿を見たいと工場の周りには深夜にもかかわらず多くの鉄道ファンが詰めかけました。

 (見学者)「(新型車両を)初めて見るんで、すごくなんていうか、めっちゃ緊張しています」
 (見学者) 「公式さん(近鉄)が発表したのは見ていたけど、生は初めてです。緊張しますね、ちゃんと撮れるのかなっていう」

 (記者リポート)「午前2時22分です。近鉄の新型通勤車両の陸路輸送が始まりました」

 工場から近鉄の車庫までは約15km。一般の公道を新型車両が運ばれていきます。車両が通るルートには歩道橋がかけられた場所もあり、その上にはやはり多くの鉄道ファンが。上からも車両の行方を見守ります。

 (記者リポート)「交差点に差し掛かりました。カーブをゆっくりと曲がっていきます」

 長さ約20m、重さ30トンにもなる新型車両。曲がるのも簡単ではありません。工事で車線が狭くなった場所などさまざまな難所を通過し、午前3時40分すぎ、出発から約1時間半かけて大勢の鉄道ファンが待つ近鉄の車庫に到着しました。

 この新型車両は今年10月にデビューする予定です。

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