今日のテーマは「超円安の今、どう投資していくのか」
今年のドル円の動きは1月の140円ほどから今は157円。現在もじりじりと円安方向へ進んでいる。
年初来からジリジリ進む円安
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
とにかくアメリカ経済が強すぎる。日本経済が弱いというか良くない。要はこの円安は投機的な動きももちろんなくはないが、基本的にはファンダメンタルズに沿った円安となっている。
どういうことかというと、米ドルの方が日本円よりも魅力が高いということ。
だからみんなドルを買い、円を売るということがどうしても起きてしまう。
となると、円高に戻った方が輸入インフレが和らぐため、投資には逆でも日本人の生活にとっては円高になってくれた方がいい。
ドルの魅力が下がるか、円の魅力が上がるか。そうならないことには簡単に円高には戻らなさそう。
為替と株価の関係 トヨタは円安が利益を押上げ
ーー日本の株価に円安というのは追い風なのか。為替と株価の関係性を見ていった際、円安時に日本株はどう動いていくのか?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
基本的には円安は日経平均を押し上げる影響がある。
円安になると輸出企業の業績が円ベースに換算した時に嵩上げされるので株価にも基本的にプラスだが、ある統計によると、日本の企業全体の売上高のうち6割から7割は海外という結果が出ている。
中小企業は別だが、大企業は今海外で稼ぐ時代となっている。
ーーいかに内需が弱いかということが見える。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
先日、トヨタが最新の決算を発表した。トヨタ自動車の場合、1円円安に動くと、営業利益を500億円押し上げる効果がある。
日本の企業で初めて営業利益が5兆円を超えたということだが、その中で約7000億円は為替の影響。
仮に去年の円安がなければ5兆円超えていなかった。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
ただ以前と比べて、円安による日経平均の押し上げ効果というのが少し薄れてきている。
例えば、円安になってもそんなに株高にならない、こういうことも起きている。
背景には、以前は日本国内で作って輸出していた。それがリーマン・ショック以降、日本の企業は、輸出から海外現地生産にどんどんどんどん切り替えた。
それが影響してると言われてはいるが、もう一つ、企業は仕入れて、作って販売する。仕入れる時と販売する時のドルのボリュームのバランスを取るように変えてきている。
以前は、円で仕入れて作ってドルで売る、だから、円安になると業績がぐっと良くなるし円高になると業績が悪くなるという関係が強かったが、為替相場の変動が激しくなってきたので、企業としては、為替の変動に何か対応しないといけない。そこで、仕入れと販売のドル建てのバランスを取る、もしくはユーロ建てのバランスを取る、そうしておくと為替が円高に振れようが円安に振れようが、業績への影響を薄めることができる。
円安の要因に新NISA?
ーーもう一つ疑問がある。今年から新NISAが始まったが、その影響でオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)だったり、S&P500がすごく話題にもなった。
円安を進める犯人として新NISAもあるのかという話もあるが、この辺りはどうか?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
あまり関係ないと思う。巷では新NISAのおかげで円安がはじまった、外国株を買えないようにすべきだという人もいるが、的外れだと思う。
為替の市場は本当に巨大で、ざっくり言うと、年明け以降日本人が新NISA経由で買った外国株、S&P500とかオルカンの規模にすると為替の取引は2000倍から3000倍。
アリと象のような関係だから、新NISA悪者説というのは都市伝説に近い。
確かに円高に進めたか円安に進めたかという意味では円安方向に作用したと思うが…
外国債権投資はあり?なし?
ーーそんな中、超円安が続いている。海外、特にアメリカ株を購入している人もいるが、為替リスクなども心配。株以外にどんな投資がいいのか。
今アメリカの金利が非常に高く利回りもいい状況なので、アメリカの債券はどうなのか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
僕は投資対象にして良いと思っている。
ただ円高が気になるという声はあり、為替の変動リスクはあるが、なにせ金利が4%以上ある状況。
円高になったときにどのぐらい目減りするか、もしくはどこまで円高になったら元本割れするかというのを計算してみた。
まず最初に、アメリカの国債、大きく「割引債」と「利付債」という二種類がある。
割引債というのは、債券だからどちらも満期になったら額面100ドルなら100ドル返ってくるが、発行するとき、もしくは流通するときの価格が100ドルより低い。途中、金利はもらえない。もらえないがだんだん償還満期が近づくにつれ、価格が額面に近づいていく。
例えば今70ドルで買える、それが何年か後に満期のときに100ドルで返ってくる、というもの。
それに対して利付債は、これも満期になると額面通り100ドル返って来るというところは同じだが、年に2回金利をもらえる。
株で言う配当のようなもので、その配当も含めての利回りが大体4%強ぐらい。
利付債だと年2回金利をドルで受け取ることになるため、受け取ったドルベースの金利をまた何かに投資しなければならないが、一般の方であれば満期まで待てばいいだけなので割引債の方が楽かと思う。
期間も様々で、もっとも短い3か月というのもある。
今日はざっくり5年10年20年に近いものを選んできたが、利回りはどれも大体4%強ぐらい。
日本の国債の利回りが最近やっと約1%を超えたとか言っているが、それよりも遥かに高い。
例えば残り4、5年、4.22%というものを1ドル157円で買ったとすると、元本割れしてしまう。これ以上円高になると、元本割れするという損益分岐点は130円。利付債の場合でも大体130円だが、120円台になると、元本割れしてしまう。
130円にすぐにはいかないと思うが、5年以内だったらこれだとちょっと怖い。
ところが10年近く、9、8年になると、ざっくり110円割れまでいくと元本割れ。
ーー10年後に110円割れているかどうか
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そういうこと。
アメリカが相当景気が悪くなったらなくはないが、日本の国力が相当高くならないと110円はなかなかないんじゃないかなと。
話が前後するが、債券は4.22%金利だった。
これが9年物だったら9年間約束されてる。今買って、9年間持ち続ければ、毎年4.17%の利回りになる。
ーー今後アメリカが利下げに動いたとしても関係なく、アメリカが利下げに転じる前に持っていれば、この数字で運用できるということ。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
利下げに転じると、もしかしたら円高に振れて動くため、円高になってから買うという戦略もある。大きく利下げすることもないだろう、円高に動く可能性もあまりないと考えるのであれば、今のうちに、アメリカの金利が下がらないうちに買うという戦略もある。
今アメリカの景気が強いため、もしかしたらアメリカの金利が4.5%、5%と上がるかもしれない。
それを待ってみるのも戦略。だが、どうなるかはわからない。
5年物だとちょっと円高リスクがあるため、やはり10年物とか15年物とか、もしくは20年物とか。
ーー20年だと、分岐点で64円。さすがにそこまで円安にはならないだろう
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
さすがにないとは思うが、4.48%っていう金利を20年間もらえると思えばいい。
つまり20年間4.5%だから、90%ぐらいの金利をもらえるということ。
だから為替が相当円高に振れない限り、元本割れしない。
投資する場合、円安だと、目先の円高リスクが怖いというふうに考える人が多いが、例えばこの場合、1ドル157円、それが10%円高になったとすると、10%ということは、2年半分ぐらい。
20年分の金利が約束されていて、そのうちに2.3年分の金利は円高で持っていかれてしまうが、残り17、18年分の金利がもらえると考えれば、一番安いところで買おうとか、一番上円高になったところで買おうと考えるよりは、タイミングを何回かに分ける方が良い。例えば今月来月、または秋口など、分けて買うぐらいでいいと思う。
ーーやはり長期投資
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
基本、債券も長期投資の方が有利だと思っている。為替リスクという意味では明らかに有利。
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