平均的な家庭で、来月から電気料金が400円ほど値上がりします。これまで政府が物価対策として行ってきた補助金が終了するためですが、過去最高水準の電気代は、私たちの生活に影響が出そうです。

■補助金終了で電気代 標準家庭で392円値上がり

「(電気代は)どんどん上がってます」
「梅雨の時期は湿気が苦手なので、エアコンつけると高くなるのかな」

電力各社が発表した6月使用分の電気代。東京電力の標準家庭では、契約者の多い「規制料金」は前の月と比べ392円値上がりし8930円となり、過去最高水準に近づく見通しです。

「えー、終わっちゃうの!?」
「これから暑くなるのに。どちらかというと夏にやってほしかった」

物価の上昇などで、実質賃金が24か月連続マイナスとなるなか、さらに家計に響く電気代。中小企業にも重くのしかかります。

東京・江戸川区にあるこちらの工場。自動車や建築に使う部品を亜鉛でめっきを行う作業をしています。

朝日鍍金工場 遠藤清孝社長
「2000アンペアですから、ものすごい大きな電流量」

毎月かかる電気代はおよそ300万円。補助金の終了や契約の変更などで今後、負担がさらに2割ほど増える見込みです。

朝日鍍金工場 遠藤清孝社長
「これだけ大きな電気代を負担してるので、さらに増えると、まさに死活問題。これから夏で(エアコンなどで)どんどん電気の使用量も増える中で、電気料金が増えるのは経営として厳しいものがある」

電気代の値上がりに加え、長期金利が上がっていることで借入金の利息も増える見込みである上、さらに円安による原材料高もあり、まさに「トリプルパンチ」になっていると言います。

朝日鍍金工場 遠藤清孝社長
「せっかく景気も良くなりつつある中で、これからだっていう時に電気代の補助金が打ち切られて電気代が上がるのは、さあ行くぞっていう気持ちが削がれる」

6月は定額減税もありますが、その翌月には中小企業も一般家庭も、電気料金の明細書を見て負担増を実感しそうです。

■実は4月使用分から値上げされていた

加藤シルビアキャスター:
家計を直撃する電気料金ですが、また値上げということになりました。

大手電力会社10社が発表した6月使用分の電気料金です。

【6月使用分の電気料金】
・北陸電力 7758円(前月比+402円)
・中部電力 8691円(前月比+346円)
・東京電力 8930円(前月比+392円)
・東北電力 8855円(前月比+419円)
・北海道電力 9523円(前月比+409円)
・関西電力 7664円(前月比+468円)
・中国電力 8514円(前月比+453円)
・四国電力 8595円(前月比+460円)
・九州電力 7551円(前月比+450円)
・沖縄電力 9663円(前月比+616円)
※標準的な家庭の場合(7月請求)

それぞれの地域で400円前後の値上げとなります。標準的な家庭の場合の試算ですが、沖縄電力では、600円以上の値上げになります。

値上げの理由には、5月末で物価高対策の政府の補助金が終了するということがあります。

ですが、そもそも4月使用分から、再生エネルギーの利用促進を目的とした「再エネ賦課金」が課されていて、値上げされていました。

具体的な金額ですが、東京電力での標準家庭の電気料金の場合、3月使用分が7576円でしたが、4月使用分は8137円(再エネ賦課金で増額)、5月使用分では8538円(補助金半減・実質値上げ)、6月使用分では8930円(補助金終了)となります。

3月に比べ、6月は約1500円値上げするということになります。

なぜこのタイミングになったのか…

林 官房長官(5月30日の会見)
「燃料価格は落ち着いている。LNG(液化天然ガス)や石炭の輸入価格が、ロシアのウクライナ侵攻前と同程度に低下した」

しかし…

TBS経済部 樫尾昴 記者
「そもそも補助金の目的は『国民生活・事業活動を守るため』だったが、いまも電気代は高いまま。理由がズレていると言わざるを得ない」

■8月か9月ごろに補助金を再開か

ホラン千秋キャスター:
物価高は依然として続いています。賃金が上がってきているとはいえ、物価高に追いついていない現状の中、「補助金を続けましょうよ」という動きにはならなかったんですね。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
おそらく誤算は2つあると思います。1つは、こんなに円安になるとは思っていなかったこと。輸入費が高くなっていて、円安による物価高が続いてる状況だということです。

もう1つは、「物価高を上回る賃上げを」と、経済の好循環になるはずだったのですが、それなりに賃上げされていても、中小企業を中心に十分ではありません。実質賃金は上がってないんです。

そうした中での電気・ガス料金の値上げなので、想定外の展開だと思います。

井上貴博キャスター:
「補助金」だと考えると財源が必要なので、ずっと続けるわけにはいかないと思います。

ただ、負担軽減策として「消費税を一時的に下げればいいじゃないか」とよく言われます。「光熱費は生活する上で必要不可欠」と考えれば、電気・ガス・水道代は軽減税率に入れられないのかな、とも感じます。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
消費税を下げるのは、なかなか難しいと思います。食料と同じような形で、軽減税率の対象にしようと思えばできると思いますが、財政面でなかなか難しいかと。そもそも消費税は、社会保障に充てられています。

おそらく、8月か9月ごろから補助金を再開する動きになるのでは、というのが岸田総理周辺の本音です。

井上キャスター:
その財源はどこから持ってくるんですか?

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
当面は借金です。本当は借金に頼らないで、値上げを上回る賃上げ、さらには好循環に持っていかなくてはいけないんですが、今はまだその段階ではない、ということのようです。

■“節電のため冷房利用を我慢したい”43%とアンケート調査も

加藤キャスター:
現在の電気料金値上げに関して、パナソニック「エオリア」のアンケート調査では、電気代の値上げ・補助金終了で、家計の負担を感じると答えた人は、81%にのぼったそうです。

【節電のため冷房利用を我慢しようと思う?】
・かなり思う 10%
・やや思う 33%
・あまり思わない 30%
・まったく思わない 20%
・わからない 7%
※2024年 今夏のエアコン利用意向に関する実態調査 パナソニック「エオリア」調べ

節電のために冷房利用を我慢しようと思うかについては、「我慢したい」(かなり思う、やや思う)と答えた人は43%にのぼり、かなり切実な問題です。

ホランキャスター:
冷房を利用しないとなると、ご高齢の方、若い方でも熱中症になる可能性があり、さらに大きな事態をまねくおそれもあります。我慢しすぎないでいただきたいですね。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
今年の夏は暑くなりそうという予想も出るなかで、冷房を我慢して、熱中症になってしまう事態は避ける必要があります。

やはり家庭の電気料金に対する補助など、いろんな手立てを講じる必要があると思います。特に高齢者や施設などには、きちんと考える必要がありますよね。

ホランキャスター:
それこそ「定額減税を給与明細に明記して」と煩雑な業務を押しつけるよりも、このような生活に直結する部分に還元することはできなかったんでしょうか。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
生活に直結する部分というのは、なかなか把握が難しいんです。とにかく、つかみ金的な4万円の減税という形で、一時しのぎなんですよね。

ただ、減税をしても、おそらく相当部分は貯蓄に回ってしまうでしょう。将来不安がある限り、なかなか景気の拡大には繋がらないこともあります。実際に値上げという事態になっているので、消費拡大どころではないのが現実だと思います。

井上キャスター:
定額減税をするくらいだったら、お金を配っていた方がコストがかかりませんよね。

TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
低所得者に給付金というのが筋でしょうね。

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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

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