脱炭素に向けて新しいエンジンの開発が進んでいる。

5月28日、東京・渋谷で行われたワークショップのステージに登場したのはトヨタ、スバル、マツダ。
日本の屋台骨を担う自動車大手3社のトップ。

トヨタ・佐藤恒治社長「カーボンニュートラルの実現に向けて大切なことは、エネルギーの未来に向き合い、多様な選択肢を準備して、CO2の排出を確実に減らしていくこと。その一つとして各社バッテリーEVの開発に取り組んでいますが、エンジンもまたマルチパスウェイに必要な技術」

発表されたのは、カーボンニュートラルの実現に向けた新たなエンジンの開発。

電動化に適合しながらエンジンを有効活用し、いかにCO2を減らせるか。

トヨタは、電動車への搭載を前提にエンジンを小型化することで車のデザイン性や空力性能を向上。

さらに、燃料自体もガソリンなどの化石燃料から脱却し、バイオ燃料などに対応することでカーボンニュートラルの実現を目指す。

またスバルは「水平対向エンジン」、マツダは「ロータリーエンジン」など、これまで培ってきた個性を生かしつつ、ともに作りながら競い合う2つのきょうそう(共創、競争)の精神で挑む。

その3社がともに“開発の場”としているのが、25日に行われた24時間の耐久レース。

レースという過酷な現場でお互いが切磋琢磨(せっさたくま)し、技術をさらに磨いていくが、今回特に注目されたのが、トヨタが開発中の「液体水素エンジン車」だ。

3年前のレース初出場以降、飛躍的に進化を遂げていて、今回は液体水素を入れる燃料タンクを円筒形から楕円(だえん)形に改良。

搭載できる液体水素の量が従来の1.5倍になり、1回の補給で走れる距離も約90kmから135kmへと大きく向上した。

今回、液体水素エンジン車にドライバーとして初めて乗る、歌手でレーサーの近藤真彦さんは「完成度の高いガソリンエンジンにも本当に匹敵するぐらいのパワー・音・バランス。素晴らしく完成度の高い車に乗せてもらっています」と話した。

その近藤さんとモリゾウことトヨタの豊田章男会長が乗る水素エンジン車。

ピットでの給水素作業では、マイナス253度の超低温の液体水素を慎重にそして、迅速に補給する。

あえて極めて過酷な現場で走ることで、市販車の開発にもつながる技術がスピーディーに磨かれていく。

途中、さまざまなアクシデントに見舞われたが、トータル332周、最後まで走り抜けた。

近藤真彦さん「普通の人が運転してもいいような車を作りたいので、丁寧に運転しないでくださいって言われて、それにちょっと感動したんですよ」

トヨタ・豊田章男会長「最終的なお客さまが乗る前には最高の実験室であり、車を鍛える場がモータースポーツだと思う」

カーボンニュートラルの実現へ。
車を愛する人たちの飽くなきチャレンジはこれからも、さらに続く。

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