【東京】東京・赤坂の「赤坂潭亭(たんてい)」は、沖縄料理として初めて2012年版ミシュランガイドで一つ星に掲載された。政治家や財界人、芸能人の間でも人気が高い。だが、7年連続で獲得してきたミシュランを逃したところに、新型コロナ禍が重なり経営危機に陥った。松澤征幸代表は「苦境の中でもがいて、気付いたことがある」。コロナ前を上回るほどのV字回復につなげた気付きとは。(東京報道部・照屋剛志)
赤坂潭亭は、料理研究家で作家の高木凜さんが、八重山料理「潭亭」での修行などを経て1998年に開店。琉球王朝の調理法を現代風にアレンジし、県産食材をふんだんに使う。泡盛古酒もそろえるなど、高級志向が著名人らに受けた。
沖縄出身の新垣純さんが経営するクレイン(東京)に譲渡されたのは2010年。同社の子会社で、松澤さんが代表を務めるクレインシップが運営している。ブランドを維持しつつ、新たなカラーを出そうと、パパイアやフーチバーといった島ヤサイを使ったランチメニューなどを開発。女性客も取り込んでいった。
1年後の11年12月、ミシュランガイド一つ星の掲載が決まった。松澤さんは「これまでのやり方が当たっていた」と自信を深める。ミシュランはその後、7年連続で獲得した。
ところが、18年にミシュランを逃してしまう。
新規客獲得を目指し、旬の国産食材を積極的に取り入れた。泡盛を減らし、日本酒やワイン、焼酎の種類を増やした。だが、売り上げは下げ止まらない。
さらに20年のコロナ流行で予約は全てキャンセルになり、緊急事態が宣言されると収入は途絶えた。苦しい状況が1年半以上も続き、「店じまいも考えていた」という22年11月、久しぶりに訪れた常連客の一言にはっとした。
「コロナで沖縄に行けないから、沖縄の味を思い出したくて来たよ」
常連客は、紅豚と根菜のヌンクー(汁物)や、ドゥルワカシーなどの沖縄料理を「おいしい」と繰り返しながら、食べていく。
もっと沖縄にこだわるべきではないか-。
これまでの注文を集計してみると、最も多く出たのは沖縄料理と泡盛だった。「日本本土とは異なる料理体験は、新規客の獲得にもつながるはず」。沖縄料理を増やし、泡盛の種類も充実させた。
コロナの5類移行も重なり、昨年度からの売り上げは「これまでにないほどの上昇率」で推移している。松澤さんは「苦しい時期を経験したからこそ、沖縄文化の需要に気付けた。食を通して、沖縄文化を発信していきたい」と話している。
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