単身世帯や夫婦共働きの増加など日本人のライフスタイルが変化する中で、近年需要を伸ばしてきた冷凍食品。

「円安」などによる「物価高」が追い風となり、さらに需要を伸ばしている。
また冷凍技術も上がり「健康」と「高級感」を両立する商品も登場するなど、市場が熱を帯びている。

■「ワンプレート」が爆売れ 売り上げは7.7倍に

冷凍食品の売り上げは、去年と6年前を比較するとおよそ1.4倍の5207億円まで上昇した。
なかでも爆発的な人気となっているのは、ごはんとおかずがセットになった「ワンプレート」の冷凍食品だ。

売り上げは、6年間で7.7倍となり、市場規模は100億円に迫る勢いとなっている。


■ワンプレート売れ筋は「健康に良い」と訴求する商品

市場アナリストの木地利光さんは、冷凍食品が「主婦の負担を軽減する食品の1品」から「若者の食事そのものになった」ことに加え、物価高が人気拡大の理由だと分析している。

【インテージ市場アナリスト・木地利光さん】「ワンプレートは、バランスの良い食事が平均価格400円ほどで準備できるため、30代以下の比較的若い世代がよく買っているという特徴がみられます。皿洗いの手間も省けるのでコスパとタイパの良さという意味で魅力が高い商品なのかなと考えています」

また、木地さんいわくワンプレートの売れ筋商品は、品目数や野菜量の多さなど「健康に良い」と訴求する商品が多いという。
こうした商品は中高年層で特によく購入されていることから、冷凍食品でも健康に良いものを購入する傾向があるということだ。

■「生」が食品のトレンドに「物価高」で外食減る中、冷凍食品に「本格」求める消費者

「健康に良い」が冷凍食品の新たなトレンドとなる中で、江崎グリコは糖質と食塩の使用量を抑えながら食物繊維量を増やした新商品「SUNAOごろっと具材の生パスタ」の販売を開始した。各家庭でよく食べられているパスタの定番の「乾麺」ではなく「生パスタ」というリッチ感と「健康」の両立を狙った商品だ。

冷凍食品では、「生パスタ」と訴求する商品の数が5年間でおよそ1.3倍に増えている。その背景について前出の市場アナリスト・木地さんはコロナ禍が終わっても物価が上がり外食を避けて自宅で食事する人が増える中で、家にいながら本格的な食事を楽しみたいと考える人が増えているのではないかと分析している。

【インテージ市場アナリスト・木地利光さん】「乾麺は茹でる手間があります。当然、洗い物も発生します。また、普通の生パスタは日持ちしません。『冷凍生パスタ』は冷凍なので、備蓄しやすく、お店で食べるようなもちもちとした本格的なパスタの食感が楽しめる点で支持されているものと推察されます」

冷凍食品に限らず「生」という言葉が食品のトレンドとなっていて、パンについては「生」のついた商品の数が、この5年間で5.4倍まで上昇している。

■冷凍ブロッコリーの市場拡大 市場規模は3倍に

また、冷凍で人気が急上昇しているジャンルが野菜そのものだ。
売り上げは、去年と6年前を比較するとおよそ1.5倍、市場規模は720億円に上る。

なかでも冷凍ブロッコリーの成長が著しく、去年の市場規模は135億円でこの6年でおよそ3倍に上昇した。

■生鮮ブロッコリーの価格上昇

冷凍ブロッコリーの需要拡大の要因の一つに生鮮のブロッコリーの値上がりがある。
農業総合研究所によると、ブロッコリーのことし4月の出荷量は、去年の同じ月と比べて、18.6%増えているにも関わらず、価格が22.1%上昇し、1株166円ほどになった。
値上がりの背景には、トラックドライバーの残業時間の制限、いわゆる「2024年問題」や円安などあるという。

また、ビタミンやミネラルなどの栄養が豊富なブロッコリーは、2026年度から消費量が多く、国民生活に重要な野菜「指定野菜」に加わることが決まっており、需要が拡大していることも値上がりの要因となっている。

■瞬間冷凍の技術向上 冷凍も生鮮と遜色のない「栄養価」

市場アナリストの木地さんは、近年、瞬間冷凍の技術が向上し、冷凍でも生鮮と遜色のない栄養が取れるようになったことも、冷凍ブロッコリーの需要拡大につながったのではないかと分析している。

【インテージ市場アナリスト・木地利光さん】「近年野菜は瞬間冷凍により、品質上、生鮮に見劣りしないベストな状態をキープできるようになりました。また、すでに調理しやすいようにカットされている点もポイントかと思います。国産やオーガニックと訴求する冷凍ブロッコリーの人気も見られており、健康志向の高さがうかがえます」

■冷凍野菜はコストの平準化が可能

さらに、食品メーカーやスーパーにも冷凍野菜を販売するうえでのメリットがあるという。

【インテージ市場アナリスト・木地利光さん】「生鮮は収穫量などにより、価格が左右されます。しかし、冷凍であれば収穫量の多いときに計画的に生産でき、コストを平準化できます。価格が安定している冷凍野菜は、生鮮野菜の価格が上がったタイミングで、スーパーなどで特売になりやすいという傾向もあります」

瞬間冷凍など技術が上がる中で、冷凍食品は「健康需要」にも対応できるラインナップが増えている。

単身世帯や夫婦共働きといったライフスタイルの変化だけでなく、高齢化などで買い物に行く頻度を減らし、調理の手間を省きたいという人が増えている現代。

消費期限も長く、価格が抑えられ、調理が簡単な冷凍食品は時流をとらえており、今後も需要の拡大が見込まれている。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。