今年1月から3月の日本経済が再びマイナス成長に転じました。今年はバブル超えの株高に、春闘での歴史的な賃上げなど、威勢の良い話が多かった裏で、一体何があったのでしょうか?
■約6割が個人消費 そもそも“GDP”とは?
高柳光希キャスター:
5月16日に発表されたGDPですが、マイナス成長となりました。
そもそもGDPとは、国内総生産と言い、Gross Domestic Productの略です。
例えば、原価50円の小麦粉でパンを作り、100円で売ったとして、消費者が100円で購入すると、50円の付加価値が生まれます。
このように国内で一定期間内に生産された商品・サービスの付加価値の総額を指し、日本の経済指標のひとつとされています。
消費が重要になってきますが、GDPの約6割が個人消費となっています。この低迷が大きな要因と言えます。
〈個人消費(実質)〉
・2023年1~3月期 0.7
・4~6月期 -0.7
・7~9月期 -0.3
・10~12月期 -0.4
・2024年1~3月期 -0.7
個人消費(実質)を見ると、2023年10~12月期と比べて、2024年1~3月期は-0.7%となっています。
リーマンショックの影響で経済が低迷した2009年以来15年ぶりの、4期連続でマイナスとなっています。
具体的な中身では、外食・食品、金融サービスは上がっています。一方で、自動車やスマートフォンなどが買い控え傾向にあるということです。
これにはどういった原因が考えられるんでしょうか。
■円安以外に、スマートフォンの高まる性能なども影響か
TBS報道局経済部 竹岡建介 記者:
今回は4期連続でマイナスとなり、異例のことです。要因は大きく2つあります。一時的な要因ですが、自動車で言うと、一部の自動車メーカーが認証不正問題で車の製造が出来なくなり、その影響が出ました。
スマートフォンに関しては、大きな理由があるわけではないですが、例えば円安の影響で、iPhoneなど海外で作っているスマートフォンの値上がりが起きています。また、スマートフォンの性能が高まり、バッテリーの持ちが良くなって買い替えまでの期間が長くなるなどが背景にあると考えられます。
一方で、根深い理由なんですが、4期連続のマイナスが浮き彫りにしたのは、やはり物価高に給料(賃金)の伸びが追いついていないということです。給料がなかなか物価高を上回る伸びがなく、私たちの財布の紐の硬さに大いに影響を及ぼした形です。
実質賃金は24か月連続のマイナスで、過去最長となっています。この状態がGDPにも、暗い影を落とした形です。
井上貴博キャスター:
デフレを脱却することを考えると、やはり物の価格が上がり、給料も上がる。これがいいサイクルでいかないといけません。
しかし、なかなか物価高が早すぎると賃金が追いついていない。しかも、先々を見ると、ガス代・電気代の補助金も終了になりますよね。
TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
打ち切られますね。
井上キャスター:
岸田総理としては、「(給料は)必ず物価高を上回るんだ」と話しますが、どこに自信があるんでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
長いトレンドで見ると、賃上げはかなり大きかったので、じわじわと効いてくる。物価も、ガス代・電気代の補助金がなくなり、少し収まってくるだろうと楽観的な見通しなんです。減税の効果なども期待しているということです。
■6月から定額減税 “将来不安”で消費拡大は?
高柳キャスター:
では低迷する日本経済について、政府はどのような対策をしていくのかを見ていきます。
岸田総理は2024年3月に、今年中に物価上昇を上回る所得を「必ず実行します」と明言しています。
そして来年以降については、物価上昇を上回る賃上げを「必ず定着させます」ということも明言しています。
そして、2024年6月から定額減税が行われます。
年収2000万円以下の納税者・扶養家族に対して、所得税が年間で3万円、住民税が年間で1万円、1人あたりで年間4万円の減税が行われます。
月に換算すると3000円程度ですが、効果があるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:
1回だけなんですよね。やはり、国民からすると“将来不安”があるので、4万円の減税があっても、貯蓄に回すなどになると思います。消費拡大には、なかなか繋がらないですね。
国民の将来不安というのは2つあります。1つは社会保障が機能して、年金がしっかりともらえるのかと。もう1つは、国の借金が1000兆円を超えているので、将来、借金がしっかりと返せるのかという不安があります。
その不安が払拭されずに、「さあ、消費にどんどん回してください」と言っても、なかなかそうならないのが現実だと思います。
■電気・ガス料金の補助金の終了で、年間3万円近くの負担増の可能性
高柳キャスター:
今後、GDPの引き上げのポイントとなる“個人消費”はどうなっていくのでしょうか。
TBS報道局経済部 竹岡建介 記者:
6月には定額減税があり、そして春闘で上がったものは大体6月くらいから実際の給与として反映されてきます。「生活にゆとりが出そう」と楽観的に思いたいんですが、しばらくは財布の紐をきつくした状態が続く可能性があります。
直近で家計を直撃するとみられるのが、政府による電気・ガス料金の補助金が5月使用分で終了することです。
これからジメジメと暑くなってくる中で、エアコンなどを使う機会が増えてくると思います。補助の打ち切りで、場合によって年間3万円近く、光熱費の負担が増える可能性があります。
個人消費の逆風は、これだけではありません。長らく続く“超円安”が更なる物価高を招く可能性もあります。
5月に入ってから、大体1ドル150~160円の間をさまよっています。もし、この水準が続いた場合、早ければ夏頃には食料品など幅広い分野で、再び値上げラッシュが起きる恐れもあります。
民間のシンクタンクによると、1ドル154円台が1年間続いた場合、世代の負担が11万円増えるという試算も出しています。
給料が増えても、物価高がさらに進行して、暮らし向きが一向に良くならないという事態になる可能性もあります。
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<プロフィール>
星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター。1955年生まれ、福島県出身。
政治記者歴30年。
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